関西の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法
キャリア・人事の成長

関西の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法

#エンゲージメント#採用#評価#研修#組織開発

関西の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法

「社員のキャリアについては一生懸命考えるのに、自分のキャリアについては全然考えていなかった」

大阪・北浜にある中堅メーカーの人事担当者が、ふとそう漏らしました。30代半ば、人事歴8年。新卒で入社し、3年間の営業経験を経て人事部に異動。以来、採用、教育、評価、労務と幅広く担当してきました。社員のキャリア相談には丁寧に対応し、研修プログラムも設計してきた。しかし、「自分は今後どうなりたいのか」「人事としてどんなキャリアを歩むのか」については、立ち止まって考えたことがなかった、と。

これは、この担当者だけの話ではありません。私は関西の企業で多くの人事担当者と接してきましたが、「社員のキャリアは考えるが、自分のキャリアは考えない」人事担当者は驚くほど多い。日々のオペレーション業務に追われ、自分のことを後回しにしている。あるいは、「人事のキャリアパスがよくわからない」という漠然とした不安を抱えながら、目の前の仕事をこなし続けている。

人事担当者のキャリアは、他の職種と比べて「見えにくい」のが実情です。営業であれば「トップセールス→マネージャー→営業部長」、エンジニアであれば「プログラマー→リーダー→アーキテクト」——キャリアの道筋がイメージしやすい。しかし、人事のキャリアパスは「何をどう積み上げれば、どこに行けるのか」が見えにくい。

この記事では、関西の企業で人事に携わる方が、自分自身のキャリアを考えるための視点と方法をお伝えします。


人事のキャリアは「広い」

まず、人事のキャリアには非常に多くの選択肢があることをお伝えしたい。「人事」と一口に言っても、その中身は多岐にわたります。

人事の主な領域

採用(新卒、中途、エグゼクティブ) 人材育成・研修(教育企画、OJT設計、リーダーシップ開発) 評価・報酬(評価制度設計、報酬制度設計、インセンティブ設計) 組織開発(組織風土改革、エンゲージメント向上、チームビルディング) 労務管理(勤怠管理、社会保険、労働法対応) HRBP(ビジネスパートナー、経営と人事の橋渡し) 人事企画(人事戦略立案、人員計画、データ分析) タレントマネジメント(後継者計画、ハイポテンシャル人材の育成) ダイバーシティ&インクルージョン 人事テクノロジー(HRテック、人事システムの導入・運用)

これだけの領域があるにもかかわらず、関西の中小企業の人事担当者は「何でも屋」になりがちです。採用も教育も評価も労務もすべて一人でやっている。そのため、「自分の専門は何か」が定まらず、キャリアの方向性が見えにくくなる。


人事のキャリアパスの5つの方向性

人事担当者のキャリアは、大きく5つの方向性に分類できます。

方向性① 人事ゼネラリストとして深める

人事の全領域を幅広くカバーし、組織全体の人事課題に対応できるゼネラリストを目指す方向性です。中小企業の人事責任者(人事部長、CHRO)を目指すキャリアパスです。

求められるスキル:人事全領域の知識、経営者との対話力、組織全体を俯瞰する視野 キャリアステップ:人事担当者→人事リーダー→人事マネージャー→人事部長→CHRO

方向性② 特定領域のスペシャリストになる

採用、報酬設計、組織開発など、特定の領域で深い専門性を持つスペシャリストを目指す方向性です。

求められるスキル:特定領域の深い専門知識、最新トレンドのキャッチアップ、実践経験の蓄積 キャリアステップ:人事担当者→特定領域の担当→専門家→シニアスペシャリスト

方向性③ HRBPとして事業に貢献する

事業部門のパートナーとして、人事の視点から事業の成長に貢献するHRBP(Human Resources Business Partner)を目指す方向性です。

求められるスキル:事業理解、データ分析力、コンサルティング能力、経営視点 キャリアステップ:人事担当者→特定事業部門のHRBP→シニアHRBP→CHRO

方向性④ 人事コンサルタントとして独立する

企業の人事部門で培った経験を活かし、外部のコンサルタントとして複数の企業の人事課題を支援する方向性です。

求められるスキル:複数企業での人事経験、課題発見・解決能力、プレゼンテーション力 キャリアステップ:企業の人事担当者→コンサルティングファーム→独立コンサルタント

方向性⑤ 経営者を目指す

人事の知識と経験を基盤に、経営者としてのキャリアを歩む方向性です。人事を「経営の根幹」として捉え、経営全体のマネジメントに携わります。

求められるスキル:経営全般の知識、財務の理解、事業開発力、リーダーシップ


自分のキャリアを考えるための3つの問い

キャリアの方向性を考える際に、以下の3つの問いが参考になります。

問い① 「何が得意か」

人事の仕事の中で、自分が最も力を発揮できる領域は何か。採用面接で候補者の本質を見抜くのが得意か。制度設計のロジックを組み立てるのが得意か。社員との対話を通じて課題を発見するのが得意か。

この「得意」は、必ずしも自分で気づいているとは限りません。周囲の人に「私の強みは何だと思いますか」と聞いてみることも有効です。

問い② 「何に情熱を感じるか」

人事の仕事の中で、最もエネルギーが湧く瞬間はいつか。候補者から「入社してよかった」と言われた瞬間か。設計した研修で社員が成長する姿を見た瞬間か。経営者に提案が採用された瞬間か。

「情熱を感じる仕事」に時間を使えるキャリアを選ぶことが、長期的な満足感につながります。

問い③ 「市場で何が求められているか」

自分の得意や情熱と、市場のニーズが合致しているかを確認します。関西の企業が人事に何を求めているか、どんな人事スキルが市場で評価されるかを理解しておくことが重要です。

現在の関西の人事市場で特に求められているスキル:

  • 経営数字を理解し、事業に貢献できる人事
  • データ分析に基づく人事施策の立案
  • 採用ブランディングと候補者体験の設計
  • 人事制度の設計・運用経験
  • 組織開発・エンゲージメント向上の経験

人事担当者のスキルアップの方法

方法① 社外の学びを取り入れる

社内の業務だけでは、人事のスキルは偏りがちです。社外の勉強会、セミナー、資格取得を通じて、視野を広げることが重要です。

関西で活用できる学びの場:

  • 人事系の勉強会やコミュニティ(大阪、京都、神戸で定期開催されているものが複数あります)
  • 人事関連の資格(社会保険労務士、キャリアコンサルタント、産業カウンセラーなど)
  • ビジネススクール(関西にはMBAプログラムを提供する大学院があります)
  • オンライン学習プラットフォーム

方法② 他社の人事担当者との交流

関西の人事担当者のネットワークに参加することで、他社の事例や最新の情報を得ることができます。「うちの会社だけの常識」が「業界全体では非常識」であることに気づく機会にもなります。

方法③ 人事以外の業務経験を積む

人事のスキルを深めるためには、逆説的ですが、人事以外の経験が重要です。営業、企画、財務——他の職種を経験することで、「事業を理解した人事」になることができます。

大阪のあるメーカーの人事マネージャーは、3年間の営業経験が「人事の仕事をする上で最大の武器になっている」と話します。「営業時代にお客様や現場の声を直接聞いた経験があるから、人事制度を設計するときに『現場で本当に使えるか』という視点が持てる」。

方法④ 経営の視点を身につける

人事のキャリアを発展させるためには、「経営の視点」が不可欠です。財務諸表の読み方、事業計画の立て方、マーケティングの基礎——こうした経営全般の知識を身につけることで、「経営に貢献できる人事」への道が開けます。

具体的なアクション:

  • 自社の決算書(損益計算書、貸借対照表)を読む習慣をつける
  • 経営会議に参加する(参加が難しければ、議事録を読む)
  • 経営者と定期的に対話する機会を作る
  • ビジネス書を月に1冊は読む

関西の人事担当者が直面する特有の課題

課題① キャリアパスが社内にない

中小企業の人事部門は少人数であることが多く、社内でのキャリアパスが限られています。「人事担当者→人事マネージャー→人事部長」という階段が社内に存在しないケースも多い。

対策:社外でのキャリアも視野に入れつつ、社内では「人事の範囲を広げる」「経営に近い仕事に関わる」ことでキャリアを発展させる。

課題② 「何でも屋」からの脱却

少人数の人事部門では、すべてを一人でやる必要があり、専門性を深める余裕がない。

対策:BPOや外部委託を活用してオペレーション業務を削減し、戦略的な業務に集中する時間を確保する。同時に、自分が特に注力したい領域を明確にし、意識的にその領域のスキルアップに投資する。

課題③ 孤独感

人事は「社員の秘密を知っている部門」であり、社内で気軽に相談できる相手が少ない。評価の情報、退職の情報、報酬の情報——こうした機密情報を扱うため、社内の他部門とは一線を画す必要がある。

対策:社外のネットワークを活用し、同じ立場の人事担当者との交流を持つ。関西の人事コミュニティに参加することで、「同じ悩みを持つ仲間」と出会えます。


人事担当者のキャリアは「組織の成長」と連動する

最後に、一つだけお伝えしたいことがあります。人事担当者のキャリアは、自分が所属する組織の成長と密接に連動しています。

組織が成長すれば、人事の仕事も高度化し、人事担当者のキャリアも発展します。逆に、組織が停滞していれば、人事の仕事も定型化し、キャリアの発展も止まります。

つまり、「自分のキャリアを発展させたければ、まず組織を成長させる」ということです。組織の成長に貢献する人事の仕事をすること——それ自体が、自分のキャリアを構築する最も確実な方法です。

社員のキャリアを支援しながら、自分自身のキャリアも忘れずに考えてほしい。人事担当者が成長することが、組織全体の成長につながるのですから。


まとめ:人事担当者のキャリア設計チェックリスト

  • [ ] 自分の「得意領域」「情熱を感じる領域」を言語化したか
  • [ ] キャリアの5つの方向性の中で、自分に合う方向性を検討したか
  • [ ] 社外の勉強会やコミュニティに参加しているか
  • [ ] 人事以外の業務経験を積む機会を意識しているか
  • [ ] 経営の視点(財務、事業戦略)を学ぶ機会を設けているか
  • [ ] 関西の人事担当者のネットワークを持っているか
  • [ ] 自分のスキルの市場価値を把握しているか
  • [ ] 3年後、5年後のキャリアイメージを持っているか
  • [ ] オペレーション業務を削減し、戦略業務に時間を使えているか
  • [ ] 自分の成長が組織の成長に貢献していると実感できているか
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