関西の企業が副業・兼業制度を導入して人材の幅を広げる方法
制度設計・運用

関西の企業が副業・兼業制度を導入して人材の幅を広げる方法

#1on1#エンゲージメント#採用#評価#組織開発

関西の企業が副業・兼業制度を導入して人材の幅を広げる方法

「副業を認めたら、みんな他のことばかりやって、本業がおろそかになるんちゃいますか?」

大阪・本町のある専門商社の社長が、懐疑的な表情でそう言いました。副業・兼業の解禁が社会的なトレンドになっていることは知っている。しかし、「社員が副業に注力して、うちの仕事がおろそかになるのでは」「ライバル企業に情報が漏れるのでは」「優秀な社員が副業先に転職するのでは」——こうした不安が先に立ち、導入に踏み切れずにいました。

副業・兼業制度に対する経営者の不安は、十分に理解できます。しかし、私の経験上、適切に設計された副業・兼業制度は、企業にとって「リスク」よりも「メリット」の方が遥かに大きい。

なぜなら、副業・兼業を通じて社員が得る「新しいスキル」「広がる視野」「多様な人脈」は、本業にもポジティブな影響をもたらすからです。また、「副業を認めてくれる会社」は、特に若い世代にとって魅力的であり、採用力の向上にもつながります。

私はこれまで500社以上の企業で人事に関わってきましたが、副業・兼業制度は「社員を縛りつける」発想から「社員の成長を応援する」発想への転換だと考えています。

この記事では、関西の企業が副業・兼業制度を導入し、人材の幅を広げるための方法について、一緒に考えてみたいと思います。


副業・兼業制度のメリットを整理する

まず、企業にとっての副業・兼業制度のメリットを具体的に整理します。

メリット① 社員のスキルが多様化する

副業を通じて、本業では得られないスキルや知識を社員が獲得します。例えば、営業職の社員がプログラミングの副業をすることで、DXの知見を本業に持ち帰る。製造業のエンジニアがコンサルティングの副業をすることで、課題解決力が向上する。

大阪のあるWeb制作会社(従業員20名)では、副業でUXデザインのプロジェクトに参加したエンジニアが、その経験をもとに自社サービスのUI改善を提案し、顧客満足度の向上につながった事例があります。「副業で学んだことが、本業を進化させた」好例です。

メリット② 採用力が向上する

特に20〜30代の若手人材にとって、「副業OK」は企業選びの重要な条件になりつつあります。副業を禁止している企業は、それだけで候補者の選択肢から外れるリスクがあります。

京都のあるIT企業(従業員40名)では、求人票に「副業推奨」と明記したところ、応募数が1.5倍に増加しました。「副業を認めてくれるということは、社員の成長を応援する会社だ」——候補者がそう解釈するケースが多いそうです。

メリット③ 離職防止につながる

「今の仕事だけでは物足りない」「新しいことに挑戦したい」——こうした欲求を持つ社員が、副業という形で満たすことができれば、転職ではなく「留まりながら挑戦する」選択をします。

メリット④ イノベーションの種が生まれる

異なる業界や分野の知見を持つ社員が増えることで、「自社の常識」にとらわれない発想が生まれやすくなります。「副業先ではこうやっている」「他の業界ではこんな手法が使われている」——こうした「異業種の知見」は、イノベーションの種になります。


副業・兼業制度の「リスク」とその対策

メリットだけでなく、リスクとその対策も正直に整理します。

リスク① 「本業への支障」

副業に時間とエネルギーを取られ、本業のパフォーマンスが低下するリスク。

対策:副業は「本業に支障がないこと」を大前提とし、本業の成果目標は維持する。パフォーマンスが低下した場合は、副業の見直しを求める条項を規程に含める。副業の労働時間の上限を設定する(例:週10時間以内)。

リスク② 「情報漏洩」

自社の機密情報が副業先に漏洩するリスク。

対策:副業先が競合企業でないことを確認する。機密保持契約(NDA)の締結を義務化する。副業の内容を事前に届け出る制度にし、情報漏洩リスクのある副業は不許可とする。

リスク③ 「健康管理」

本業と副業の合計で過重労働になり、健康を損なうリスク。

対策:副業を含めた総労働時間の管理を行う。本業と副業を合わせて週60時間を超えないよう指導する。定期的に健康状態を確認する。

リスク④ 「転職リスク」

副業先に引き抜かれるリスク。

対策:正直に言えば、このリスクを完全にゼロにすることはできません。しかし、副業を禁止したからといって転職リスクがなくなるわけでもない。むしろ、「副業を認めてくれる会社だから留まる」という効果の方が大きいケースが多い。自社の魅力を高めることが、最も効果的な「転職防止策」です。


副業・兼業制度の設計ポイント

実際に制度を導入する際の設計ポイントを紹介します。

ポイント① 「届出制」を基本にする

副業を「許可制」にすると、「申請が面倒」「上司に言いにくい」というハードルが生まれます。「届出制」にすることで、社員の心理的ハードルを下げつつ、会社として副業の内容を把握できます。

ただし、以下のケースは「不許可」とするルールを設けます。

  • 競合企業での副業
  • 自社の機密情報を利用する副業
  • 本業に支障が出る副業(深夜勤務が常態化するなど)

ポイント② 「副業ガイドライン」を整備する

副業に関するルールを明文化した「副業ガイドライン」を作成し、全社員に周知します。

ガイドラインに含めるべき内容:

  • 副業が認められる条件と認められない条件
  • 届出の手続きと書式
  • 労働時間の管理方法
  • 機密保持に関する注意事項
  • 本業のパフォーマンスが低下した場合の対応
  • 相談窓口(人事部門)

ポイント③ 「試行期間」を設ける

いきなり全社導入するのではなく、6ヶ月〜1年の「試行期間」を設けることをお勧めします。試行期間中に、制度の課題や改善点を洗い出し、本格導入時に反映する。

大阪のある商社(従業員100名)では、まず希望者10名を対象に6ヶ月間の「副業トライアル」を実施しました。トライアル中に「どんな副業をしているか」「本業への影響はあるか」「得られた学びは何か」を定期的にヒアリングし、課題の洗い出しと制度の微調整を行いました。トライアルの結果が良好だったため、翌年から全社員に副業を解禁しています。

ポイント④ 「副業の成果」を本業に活かす仕組み

副業で得た知見やスキルを、本業にフィードバックする仕組みを作ることで、副業の企業メリットを最大化できます。

  • 四半期に一度の「副業報告会」で、副業での学びを共有する場を設ける
  • 上司との1on1で、「副業での経験をどう本業に活かすか」を話し合う
  • 副業で培ったスキルを評価に反映する(例:副業でプログラミングを習得→社内のDX推進で活躍)

神戸のあるコンサルティング会社(従業員30名)では、半年に一度の「サイドプロジェクト共有会」を開催しています。副業をしている社員が「何をしているか」「何を学んだか」を全社に共有する場です。「こんな面白い仕事がある」「この手法はうちにも使える」——こうした対話が、社内にイノベーションの種を蒔いています。


関西の企業文化と副業・兼業

「商い」の街・大阪と副業の親和性

大阪は「商いの街」です。本業以外にも「稼ぐ手段」を持つことに対して、比較的ポジティブな文化があります。「副業=本業を疎かにしている」ではなく、「副業=商売の幅が広い」と捉える文化は、副業制度の導入においてアドバンテージになります。

京都の「職人気質」と副業

京都の企業文化には「一つの道を極める」職人気質があります。副業制度は、この職人気質と矛盾するように見えるかもしれません。しかし、「本業の専門性をさらに深めるための副業」——例えば、エンジニアが技術コミュニティで講師を務める、デザイナーが個人のクリエイティブ活動を行う——こうした形の副業は、職人気質とも両立します。

神戸の「国際性」を活かした副業

神戸は国際的な街であり、海外との接点を持つ副業——外国語の翻訳、海外企業とのプロジェクト参加——がしやすい環境があります。こうした副業経験が、社員のグローバル視野を広げ、本業にも還元される可能性があります。


副業・兼業制度は「経営の選択」

副業・兼業制度の導入は、「時代の流れに合わせる」という受動的な対応ではなく、「人材の成長を通じて企業の競争力を高める」という能動的な経営判断です。

副業を認めることで社員の視野が広がり、スキルが多様化し、本業へのエンゲージメントが高まる。採用力が向上し、離職が減少し、イノベーションの種が生まれる。これらは、「人にとって良い」だけでなく、「経営にとっても合理的」な効果です。

もちろん、すべての企業にとって副業・兼業制度が最適解であるとは限りません。自社の事業特性、社員構成、組織文化を踏まえた上で、「自社に合った形」を設計することが大切です。


「副業人材」を受け入れる側の視点

副業・兼業制度は、「自社の社員が副業する」だけでなく、「外部の副業人材を自社に受け入れる」という視点でも活用できます。

関西の中小企業が、大企業やスタートアップで働く人材を「副業」として受け入れることで、自社にない専門スキルやノウハウを獲得できます。特に、DX推進、マーケティング、人事制度設計——こうした専門分野で、フルタイムの専門人材を雇用するのが難しい中小企業にとって、「副業人材の活用」は現実的な選択肢です。

大阪のある製造業(従業員45名)では、東京のIT企業に勤めるエンジニアを「副業DXアドバイザー」として月2回のオンラインミーティングで受け入れています。月額の報酬は10万円程度ですが、社内のDX推進が大きく前進し、「フルタイムのDX人材を採用するコスト」を考えれば非常に効率的だと評価しています。

神戸のあるベンチャー企業(従業員15名)では、大手メーカーの人事部長を「副業人事顧問」として迎え、月1回の人事制度の相談に乗ってもらっています。大手企業の豊富な経験に基づくアドバイスが、自社の人事制度の設計に大きく貢献しています。

「副業人材の送り出し」と「副業人材の受け入れ」——この双方向の視点で副業・兼業制度を捉えることで、中小企業の人材戦略の幅が大きく広がります。

関西の企業が、副業・兼業制度を通じて社員の成長の幅を広げ、企業としての競争力を高めていくこと。その実現に向けて、一緒に考え続けたいと思います。


まとめ:副業・兼業制度導入チェックリスト

  • [ ] 副業・兼業に関する自社の方針(解禁するかどうか)を経営者と合意しているか
  • [ ] 「届出制」を基本とし、不許可条件を明確にしているか
  • [ ] 副業ガイドライン(ルール、手続き、注意事項)を整備しているか
  • [ ] 機密保持に関する対策(NDA、競合チェック)を講じているか
  • [ ] 労働時間の管理方法を定めているか
  • [ ] 試行期間を設けて段階的に導入する計画があるか
  • [ ] 副業での学びを本業にフィードバックする仕組みがあるか
  • [ ] 制度の運用状況を定期的に検証し、改善しているか
  • [ ] 副業制度を採用のアピールポイントとして活用しているか
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