関西の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法
キャリア・人事の成長

関西の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法

#採用#評価#研修#組織開発#経営参画

関西の企業が「人事担当者自身のキャリア」を考える方法

「社員のキャリア開発を支援するのが私の仕事なんですけど、自分自身のキャリアについては、まったく考えられていないんです」

神戸・三宮にある中堅メーカーの人事課長が、少し苦笑いしながらそう話してくれました。人事歴12年。採用から始まり、研修企画、評価制度の運用、労務管理——人事のあらゆる業務を経験してきたベテランです。しかし、「自分自身のキャリアの先」が見えない。

「人事って、どこまでいっても『人事の中のキャリア』じゃないですか。営業なら売上で評価されるし、技術なら専門性が積み上がる。でも人事って、何が積み上がっているのか、自分でもよくわからないんです」

この悩みは、関西の企業で人事に携わる方々から頻繁に聞く声です。人事担当者は、社員のキャリア支援には熱心ですが、自分自身のキャリアについては後回しにしがちです。あるいは、そもそも「人事のキャリアパス」が社内に存在しないため、考えようがないというケースも多い。

私は関西の企業で人事に関わる中で、人事担当者自身がキャリアを真剣に考えることが、人事部門の質を高め、ひいては組織全体の力を高めることにつながると考えています。その具体的な方法をお伝えします。


人事担当者が「自分のキャリア」を考えにくい理由

理由① 社内に「人事のキャリアパス」がない

多くの中小企業では、人事部門は少人数です。人事担当者1〜3名という企業が大半で、「人事部長→人事課長→人事担当者」という階層があっても、ポストは限られています。上のポストが空かない限り昇進できない。かといって、他部門への異動の道も見えにくい。

大阪のある専門商社(従業員90名)では、人事担当者は2名。人事マネージャーの上は管理部長で、管理部長は総務・経理・人事を統括しています。「管理部長になるには、総務も経理もわからないといけない。でも、人事しかやったことがない自分には、管理部長は遠い存在に感じる」と人事マネージャーは話します。

理由② 「成果」が見えにくい

営業であれば売上、製造であれば生産性——数字で成果が見える職種に比べて、人事の成果は見えにくい。「採用した人材が活躍するまでに数年かかる」「制度を変えた効果が現れるのは半年後」——人事の仕事は、効果が出るまでの時間軸が長く、「自分がどれだけの価値を生み出しているか」を実感しにくいのです。

理由③ 「専門性」の定義が曖昧

人事の専門性とは何か——この問いに、明確に答えられる人は少ない。「労務管理の知識」「採用のスキル」「評価制度の設計力」——個別のスキルは挙げられますが、「人事のプロフェッショナルとは何か」という全体像は曖昧です。

京都のあるIT企業の人事担当者は、「転職サイトで自分のスキルを登録しようとしたとき、何を書けばいいかわからなかった。『人事経験8年』としか書けない自分に愕然とした」と話します。

理由④ 社員のキャリア支援で手一杯

皮肉なことに、人事担当者は社員のキャリア開発には時間とエネルギーを注いでいますが、自分自身のキャリアについて考える時間がありません。「他の人のキャリアは一生懸命考えるのに、自分のキャリアは放置している」——こうした自覚を持つ人事担当者は少なくありません。


人事担当者のキャリアの「方向性」を整理する

人事担当者のキャリアには、いくつかの方向性があります。自分がどの方向に進みたいかを考えることが、キャリアを考える第一歩です。

方向性① 人事のスペシャリスト

人事の特定領域で高い専門性を身につける方向です。採用、人材開発、組織開発、報酬設計、労務管理——いずれかの領域で深い知識と経験を持ち、「この領域なら誰にも負けない」という強みをつくります。

この方向性に向いている人:

  • 特定の領域に強い関心がある
  • 深く掘り下げることが好き
  • 専門知識を武器にしたい

方向性② 人事のゼネラリスト

人事の幅広い領域をカバーし、人事部門全体をマネジメントできる力を身につける方向です。CHRO(最高人事責任者)や人事部長を目指すキャリアパスです。

この方向性に向いている人:

  • 複数の領域に関心がある
  • マネジメントに関心がある
  • 経営と人事をつなぐ役割を担いたい

方向性③ 経営寄りのキャリア

人事の経験を活かして、経営企画や事業運営に進む方向です。人事の知見を持った経営人材は、組織をつくり、人を動かす力を持っています。

この方向性に向いている人:

  • 事業や経営への関心が強い
  • 人事だけでなく、事業全体を見たい
  • 将来、経営に携わりたい

方向性④ 外部でのキャリア

人事コンサルタント、社労士、キャリアコンサルタント、人材紹介会社——人事の経験を活かして、外部で活躍する方向です。

この方向性に向いている人:

  • 複数の企業の人事課題に関わりたい
  • 独立志向がある
  • 専門資格を活かしたい

人事担当者が「専門性」を高めるための具体的な方法

方法① 自分の「強み」と「弱み」を棚卸しする

まず、自分自身の人事としてのスキルを棚卸しします。

棚卸しの項目:

  • 経験した業務領域(採用、研修、評価、労務、制度設計など)
  • 各領域での経験年数と担当規模
  • 成果を出した経験(具体的なエピソード)
  • 得意な領域と苦手な領域
  • 保有資格(社労士、キャリアコンサルタントなど)
  • 社外での活動(勉強会、セミナー登壇、執筆など)

この棚卸しを通じて、「自分の強みは何か」「これから伸ばすべきスキルは何か」を明確にします。

大阪のある製造業の人事担当者(30代)は、棚卸しを行った結果、「採用は得意だが、制度設計の経験がほとんどない」ことに気づきました。「採用だけの人事担当者では、キャリアの幅が広がらない。制度設計の経験を積むことが、次のステップに進むための鍵だと思った」と話します。

方法② 「経営の言葉」で語れるようになる

人事の専門性を高める上で最も重要なのは、「経営の言葉で人事を語れるようになること」です。人事の施策を「人にとって良いこと」だけでなく、「事業にとってどういう効果があるか」で説明できる力です。

具体的には:

  • 採用コスト、離職コスト、研修ROIなど、人事のコストと効果を数字で把握する
  • 人件費率、一人あたり売上高、労働分配率など、経営指標と人事指標の関係を理解する
  • 事業計画と人員計画の連動を理解する

「経営者と同じ言葉で対話できる人事」は、経営にとって頼もしいパートナーです。この力を身につけることが、人事担当者としてのキャリアの大きな武器になります。

方法③ 社外のネットワークを広げる

中小企業の人事担当者は、社内に人事の仲間が少ないことが多い。そのため、社外に学びの場やネットワークを持つことが重要です。

関西には、人事担当者向けの勉強会やコミュニティがいくつかあります。人事の専門セミナー、異業種交流会、社労士会の研究会——こうした場に参加することで、他社の事例を学び、自分の視野を広げることができます。

京都のあるメーカーの人事担当者は、月に1回、関西の人事担当者が集まる勉強会に参加しています。「社内では当たり前だと思っていたことが、他社では全然違っていた。自分の視野の狭さに気づくと同時に、自分が持っている知識や経験にも価値があることがわかった」と話します。

方法④ 資格取得を計画的に進める

人事に関連する資格は、キャリアの幅を広げる手段になります。

代表的な資格:

  • 社会保険労務士:労務管理の専門資格。人事の基盤となる知識が体系的に身につく
  • キャリアコンサルタント:キャリア開発支援の国家資格。面談スキルの向上にもつながる
  • 産業カウンセラー:メンタルヘルスや職場のコミュニケーションに関する資格
  • 衛生管理者:労働安全衛生の資格。50名以上の事業場では選任が必要

資格は「取ること」が目的ではなく、「学びを通じて専門性を高めること」が目的です。しかし、資格を持つことで、社内外からの信頼が高まり、キャリアの選択肢が広がることも事実です。

方法⑤ 「言語化」する力を鍛える

人事の仕事は、「言語化」の力が求められます。制度の設計意図を説明する、評価の基準を明文化する、経営者に人事の課題を報告する——すべて「言語化」が必要です。

言語化の力を鍛えるには:

  • 社内向けの報告資料を「わかりやすく」書く練習をする
  • 人事施策の「目的」「方法」「期待効果」を簡潔に文章化する
  • 社外のセミナーや勉強会で発表する機会を持つ
  • 人事に関するブログや記事を書いてみる

組織として「人事担当者のキャリア」を支援する方法

人事担当者のキャリアは、個人の努力だけでなく、組織としてのサポートも重要です。

方法① 人事担当者のキャリアパスを設計する

人事部門内のキャリアパスを明確にします。「入社→人事アシスタント→人事担当者→人事マネージャー→人事部長」という階層だけでなく、「採用専門→制度設計→組織開発」というような領域横断のキャリアパスも示します。

方法② 他部門との異動・ローテーションを設ける

人事担当者が他部門の経験を積むことは、人事としての視野を広げる上で非常に有効です。「営業を3年経験してから人事に戻る」「事業企画部で2年間働いてから人事に戻る」——こうした異動は、人事担当者に事業の現場感覚を持たせ、経営に貢献できる人事へと成長させます。

大阪のある商社では、人事マネージャーを2年間、事業部門に異動させました。「現場を知ることで、人事施策の提案に説得力が出るようになった。現場の管理職の苦労がわかるようになり、制度設計の発想が変わった」とその人事マネージャーは話します。

方法③ 外部研修や勉強会への参加を推奨する

人事担当者の学びの機会を組織として支援します。外部研修の費用補助、セミナーへの参加を業務時間内に認める、資格取得の支援制度——こうした仕組みが、人事担当者の成長を後押しします。

方法④ 経営者との対話の機会を設ける

人事担当者が経営者と直接対話する機会を定期的に設けます。経営者の考えを理解し、経営の視点で人事を考える力を養うためです。これは、人事担当者のキャリアにとって、何よりも重要な学びの機会です。


人事担当者のキャリアにおける「転機」への対応

転機① 「このままでいいのか」という疑問を感じたとき

人事経験5〜8年くらいで、「このまま人事を続けていていいのか」という疑問を感じる人が多い。これは、一通りの業務を経験し、日常業務がルーティン化してきた段階で生じやすい転機です。

この転機への対応:

  • 自分の「強み」と「やりたいこと」を改めて棚卸しする
  • 社外のネットワークで他社の人事担当者の話を聞く
  • 新しいプロジェクト(制度改革、DX推進など)に自ら手を挙げる
  • 資格取得など、新しい学びを始める

転機② 管理職になるかどうかの判断

人事のプレイヤーとして優秀な人が、必ずしも管理職に向いているとは限りません。「管理職になりたいのか」「スペシャリストとして専門性を追求したいのか」——この判断は、キャリアの大きな分岐点です。

転機③ 転職を考えるとき

人事の転職市場は、関西でも活発です。「今の会社では成長の機会が限られている」「もっと大きな組織で人事を経験したい」「人事コンサルタントに転身したい」——こうした動機で転職を考える人事担当者は少なくありません。

転職を考える際は、「何を求めて転職するのか」を明確にすることが重要です。「今の環境から逃げたい」だけの転職は、同じ問題を繰り返す可能性があります。


まとめ:人事担当者こそ、自分のキャリアに真剣に向き合う

人事担当者は、社員のキャリアを支援する立場にあります。しかし、「他者のキャリアを支援する力」は、「自分自身のキャリアに向き合う力」から生まれます。

自分のキャリアについて真剣に考え、学び続けている人事担当者は、社員のキャリア支援においても説得力があります。逆に、自分のキャリアを放置している人事担当者が、社員のキャリア開発を語っても、言葉に力がありません。

関西の中小企業で人事に携わる方々に伝えたいのは、「自分のキャリアを考えることは、利己的なことではない」ということです。人事担当者が成長することは、人事部門の質を高め、組織全体の力を高めることにつながります。

まずは、自分自身のスキルの棚卸しから始めてみてください。そして、「3年後、自分はどんな人事担当者になっていたいか」を考えてみてください。その問いに向き合うことが、キャリアを切り拓く第一歩です。

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