
関西の企業が「採用広報」をゼロから始める方法
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関西の企業が「採用広報」をゼロから始める方法
「うちみたいな中小企業に、採用広報なんて必要ですか? 求人サイトに載せたら、それで十分ちゃいますか?」
大阪・淀屋橋にある食品卸の人事担当者から、そんな質問をいただいたことがあります。従業員60名ほどの企業で、毎年数名の採用を行っている。求人サイトに掲載すればそこそこ応募が来る。だから採用広報なんて大企業がやるもの——そう考えるのは無理もありません。
しかし、ここ数年で採用環境は大きく変わりました。関西の有効求人倍率は上昇を続けており、特に中小企業の採用は年々厳しさを増しています。求人サイトに載せるだけでは応募が集まらない。応募が来ても、「この会社で働きたい」という意欲を持った人材が少ない。入社しても、「思っていたのと違う」と早期離職してしまう。
こうした課題に対して、「採用広報」は非常に有効な手段です。採用広報とは、自社の魅力や働き方を継続的に発信し、求職者との接点を増やしていく活動のこと。大企業のような大規模なブランディングではなく、中小企業だからこそできる「等身大の発信」が、採用力を大きく高めるのです。
私はこれまで多くの関西企業の人事に携わる中で、採用広報に取り組み始めた企業が確実に採用力を高めていく姿を見てきました。この記事では、関西の企業が採用広報をゼロから始めるための考え方と具体的な方法をお伝えします。
なぜ今、採用広報が必要なのか
理由① 求人サイトだけでは「自社らしさ」が伝わらない
求人サイトのフォーマットは定型的です。仕事内容、給与、勤務地、福利厚生——こうした「条件」は比較できても、「どんな雰囲気の会社か」「どんな人が働いているか」「どんな想いで事業をしているか」は伝わりにくい。
関西の中小企業にとって、条件面で大企業と勝負するのは現実的ではありません。だからこそ、「条件では測れない魅力」を伝える手段が必要です。それが採用広報です。
理由② 求職者の情報収集行動が変わった
今の求職者は、求人サイトで気になる会社を見つけたら、すぐにその会社のWebサイト、SNS、口コミサイトを確認します。「この会社、ネットで調べても何も出てこない」「社員の声がまったく見えない」——そう感じた求職者は、不安を抱えたまま応募を見送ります。
採用広報は、こうした「検索されたとき」に見つけてもらうための発信活動でもあります。
理由③ 採用のミスマッチを防げる
採用広報を通じて、自社の「ありのまま」を伝えることで、「この会社に合う人」が応募してくれる確率が高まります。「思っていたのと違った」という入社後のギャップが減り、早期離職の防止にもつながります。
大阪のあるIT企業(従業員35名)では、採用広報で「うちの会社の大変なところ」も正直に発信し始めたところ、応募数は2割ほど減ったものの、入社後の半年以内離職率がゼロになりました。「量より質」の採用ができるようになった好例です。
採用広報の「3つの柱」を理解する
採用広報は大きく3つの柱で構成されます。
柱① 「会社を知ってもらう」——認知拡大
そもそも自社の存在を知ってもらわなければ、応募にはつながりません。特に関西のBtoB企業や中小企業は、一般的な知名度が低いケースが多い。「良い会社なのに、知られていない」という状態を打破するための発信です。
具体的な活動:
- SNS(X、Instagram、LinkedInなど)での定期的な情報発信
- 自社ブログやnoteでの記事公開
- 地域メディアへの露出(関西の地域誌、Webメディアなど)
- 業界イベントやセミナーへの登壇や参加
柱② 「会社を好きになってもらう」——魅力訴求
会社を知ってもらった上で、「この会社で働きたい」と思ってもらうための発信です。「条件」ではなく「体験」を伝えることがポイントです。
具体的な活動:
- 社員インタビュー記事(仕事のやりがい、成長のストーリーなど)
- オフィスの雰囲気が伝わる写真や動画
- 社内イベントやプロジェクトの様子
- 経営者の想いやビジョンの発信
柱③ 「応募のハードルを下げる」——接点づくり
いきなり「応募する」はハードルが高い。まずは気軽に会社を知れる接点を作ることで、「応募してみようかな」という気持ちを育てます。
具体的な活動:
- カジュアル面談(選考ではない情報交換の場)
- 会社見学会やオフィスツアー
- 説明会やミートアップの開催
- Wantedlyなどのカジュアルな採用プラットフォームの活用
採用広報をゼロから始めるステップ
ステップ① 「自社の魅力」を棚卸しする
採用広報の第一歩は、「何を発信するか」を明確にすることです。そのためには、まず自社の魅力を棚卸しします。
ここで重要なのは、「人事部門だけで考えない」ということ。現場の社員、経営者、場合によってはお客様にもヒアリングして、「外から見た自社の魅力」を発見します。
棚卸しの質問例:
- なぜこの会社に入社したのか?
- 入社して一番良かったと思うことは?
- 友人にこの会社を勧めるなら、何と言う?
- この会社の「他にはない強み」は何だと思う?
- 仕事で一番やりがいを感じる瞬間は?
京都のある製造業(従業員80名)では、全社員にアンケートを実施して自社の魅力を棚卸ししました。すると、「大手にはない裁量の大きさ」「社長が全社員の名前を覚えている安心感」「京都のものづくり文化への誇り」——こうした、人事部門では気づかなかった魅力が数多く出てきました。
ステップ② 「誰に届けたいか」を明確にする
発信する内容は、「誰に届けたいか」によって変わります。ターゲットとなる人材像を明確にしましょう。
- どんなスキルや経験を持った人に来てほしいか
- どんな価値観や志向を持った人が自社に合うか
- その人はどんな媒体で情報収集しているか
- その人が転職先を選ぶときに重視するポイントは何か
例えば、「20代後半のITエンジニアで、大手企業に物足りなさを感じている人」がターゲットなら、発信する内容は「裁量の大きさ」「技術的なチャレンジ」「スピード感」になるでしょう。媒体はXやQiita、Wantedlyが適しているかもしれません。
一方、「40代のベテラン営業職で、地元関西で腰を据えて働きたい人」がターゲットなら、「安定性」「地域密着」「経験を活かせるポジション」が訴求ポイントになります。
ステップ③ 「発信媒体」を選ぶ
すべての媒体で発信する必要はありません。自社のリソースとターゲットに合った媒体を1〜2つ選び、まずはそこに集中するのが賢明です。
主な媒体と特徴:
- note:長文の記事を掲載できる。社員インタビューや経営者のメッセージに向く。SEOにも強い
- X(旧Twitter):短文で気軽に発信できる。拡散力が高い。日常的な会社の雰囲気を伝えやすい
- Instagram:写真や短い動画で視覚的に発信できる。若手向け。オフィスの雰囲気やイベントの様子に向く
- Wantedly:採用に特化したプラットフォーム。カジュアル面談との相性が良い。ストーリー機能で会社の魅力を発信できる
- 自社ブログ:自由度が高い。採用ページと連携しやすい
関西の中小企業がまず始めるなら、私はnoteかWantedlyをお勧めします。更新の手間が比較的少なく、長文で自社の魅力をじっくり伝えられるからです。
ステップ④ 「コンテンツ」を作る
最も重要なのはコンテンツです。何を発信するかで採用広報の成果が決まります。
中小企業が最初に作るべきコンテンツは、「社員インタビュー」です。理由はシンプルで、求職者が最も知りたいのは「どんな人が、どんな想いで働いているか」だからです。
社員インタビューの構成例:
- 入社の経緯(なぜこの会社を選んだか)
- 現在の仕事内容(具体的に何をしているか)
- 仕事のやりがいと大変なところ
- 今後の目標やキャリアプラン
- 求職者へのメッセージ
大阪のある設計事務所(従業員25名)では、3名の社員インタビュー記事をnoteに公開したところ、応募者の8割が「インタビュー記事を読んで応募した」と回答しました。「社員の生の声が聞ける」ことが、応募の決め手になっていたのです。
その他のコンテンツ例:
- 経営者のビジョンや想い
- 一日のスケジュール(タイムライン形式)
- プロジェクトストーリー(成功も失敗も正直に)
- 社内制度の紹介(なぜその制度があるのか、背景を含めて)
- 新入社員の成長記録
ステップ⑤ 「運用体制」を整える
採用広報は「始める」こと以上に、「続ける」ことが重要です。月1回の更新でも良いので、継続的に発信できる体制を整えましょう。
運用体制のポイント:
- 担当者を決める(人事部門に限らず、広報担当や有志の社員でもOK)
- 月間の発信計画を立てる(月○本の記事を公開する、など)
- コンテンツのネタ出しを定期的に行う(月1回のミーティングなど)
- 写真や動画の素材を日常的にストックする
神戸のあるメーカー(従業員50名)では、「採用広報チーム」を人事2名+有志社員3名で結成し、月2本のnote記事と週3回のX投稿を継続しています。記事の企画会議を月1回開催し、「次は誰のインタビューを載せるか」「どんなテーマの記事を書くか」を話し合っています。
関西企業が採用広報で活かせる「地域の強み」
「関西で働く」こと自体が魅力になる
東京一極集中が進む中、「関西で働ける」ということ自体が、関西出身者や関西で暮らしたい人にとって大きな魅力です。生活コストの低さ、通勤時間の短さ、食文化の豊かさ、自然へのアクセスの良さ——こうした「関西で働く生活」の魅力を具体的に発信することで、「条件面では大企業に劣る」中小企業でも差別化ができます。
京都のあるソフトウェア企業(従業員30名)では、「京都で働くエンジニアの一日」という記事を公開し、通勤20分のオフィスから帰宅後に鴨川沿いを散歩する日常を紹介しました。東京のIT企業からの転職希望者が増え、「京都の生活に惹かれて応募した」という声が複数寄せられています。
大阪の「商いの文化」を活かす
大阪の企業には、「おもろいことをやろう」「儲かる仕組みを考えよう」という商いの文化があります。この文化を採用広報に反映させることで、「大阪らしさ」が伝わる発信ができます。
例えば、「社員が考えた新しいビジネスアイデア」を紹介したり、「お客様の課題をこう解決した」というストーリーを発信したり。「商い」の面白さを伝えることが、大阪の企業ならではの採用広報になります。
京都の「ものづくり」「老舗の矜持」
京都には、何十年、何百年と続く企業が多くあります。「長年培ってきた技術」「伝統と革新の両立」「京都の美意識を活かしたものづくり」——こうしたストーリーは、他の地域にはない採用広報のコンテンツになります。
神戸の「国際性」「スタートアップ文化」
神戸は国際的な街であり、スタートアップ支援も活発です。「グローバルな環境で働ける」「新しいことに挑戦できる」——こうした神戸ならではの魅力を採用広報に活かせます。
採用広報の効果を測定する
採用広報を「やりっぱなし」にしないために、効果測定も重要です。
測定すべき指標(KPI)
- 認知度指標:Webサイトのアクセス数、SNSのフォロワー数、記事の閲覧数
- 関心度指標:カジュアル面談の申し込み数、説明会への参加数、スカウトメールの返信率
- 応募指標:応募数、応募者の質(自社に合った人材の割合)、応募経路の変化
- 採用成果指標:内定承諾率、入社後の定着率、入社者の満足度
すべてを完璧に測定する必要はありません。まずは「記事の閲覧数」と「応募経路の変化」の2つを追跡するところから始めましょう。
大阪のある人材サービス企業(従業員45名)では、応募フォームに「当社を知ったきっかけ」の項目を追加しました。すると、半年後には応募者の30%が「note記事」「X」「社員の紹介」経由になっており、求人サイト依存からの脱却が進んでいることが確認できました。
「完璧」を目指さない——関西の中小企業の採用広報
採用広報で最もよくある失敗は、「完璧を目指して何も始められない」ことです。
「プロのカメラマンに写真を撮ってもらわないと」「デザインをきちんとしないと」「文章がうまく書けないから」——こうしたハードルを自ら作って、いつまでも始められない企業が少なくありません。
しかし、中小企業の採用広報に「完璧な見た目」は必要ありません。むしろ、「等身大の姿」を飾らずに発信する方が、求職者には響きます。スマートフォンで撮った写真でいい。文章は上手くなくていい。大切なのは、「伝えたいこと」が伝わっているかどうかです。
神戸のある物流企業(従業員40名)の人事担当者は、最初は「文章を書くのが苦手」と尻込みしていました。しかし、社員にインタビューした内容を「そのまま」文字起こしして記事にしたところ、「社員のリアルな声が聞ける」と好評で、応募のきっかけになるケースが増えました。「きれいに書くこと」より「リアルに伝えること」の方が、求職者には刺さるのです。
採用広報は「資産」になる
採用広報で発信したコンテンツは、「資産」として蓄積されます。一度作った記事は、何年も閲覧され続ける。SNSで発信した内容は、フォロワーの増加とともにリーチが広がっていく。
求人サイトの掲載は、期間が終われば消えてしまいます。しかし、採用広報で作ったコンテンツは残り続ける。「今は採用していないけれど、記事を読んで会社に興味を持った。次に求人が出たら応募したい」——こうした「将来の応募者」を育てる効果もあります。
関西の企業が、地域の魅力と自社の強みを組み合わせた採用広報を展開していくこと。それは、「今の採用」だけでなく、「未来の採用力」を高める投資でもあります。
ゼロからのスタートで構いません。まずは一つの記事、一つの投稿から始めてみてください。その一歩が、採用の景色を変えていくはずです。
まとめ:採用広報ゼロからスタートのチェックリスト
- [ ] 自社の魅力を社員・経営者へのヒアリングで棚卸ししたか
- [ ] ターゲットとなる人材像(ペルソナ)を明確にしたか
- [ ] 発信媒体を1〜2つ選定したか
- [ ] 最初のコンテンツ(社員インタビューなど)を作成したか
- [ ] 運用体制(担当者、更新頻度、企画ミーティング)を決めたか
- [ ] 写真や動画の素材をストックする仕組みがあるか
- [ ] 効果測定のKPI(閲覧数、応募経路など)を設定したか
- [ ] 「完璧」を目指さず、まず発信を始めたか
- [ ] 関西の地域特性(大阪の商い文化、京都のものづくりなど)を活かした発信を考えたか
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