京都の企業が「内定辞退」を減らすための採用プロセス改善
採用・選考

京都の企業が「内定辞退」を減らすための採用プロセス改善

#採用#評価#研修#経営参画#キャリア

京都の企業が「内定辞退」を減らすための採用プロセス改善

「内定を出しても、3割以上が辞退するんです。せっかく何度も面接をして、社員にも会ってもらって、条件も出したのに。辞退の連絡を受けるたびに、脱力感に襲われます」

京都・四条烏丸にある老舗の繊維商社の採用担当者が、疲れた表情でそう話してくれました。従業員130名。毎年5〜8名の中途採用を行っていますが、内定辞退率が年々上昇しています。昨年は内定を出した10名のうち4名が辞退。辞退者の多くは、大阪や東京の大手企業に流れていきました。

内定辞退は、京都の企業にとって深刻な問題です。京都は大阪に隣接しており、候補者にとっては「京都の中堅企業」と「大阪の大企業」を比較検討しやすい環境にあります。また、京都には大学が多く、新卒採用でも「京都で学んだけれど、就職は東京・大阪で」という学生が少なくありません。

しかし、内定辞退を「仕方ない」で片づけてはいけません。内定辞退には必ず理由があり、採用プロセスの改善によって辞退率を下げることは可能です。

私は京都の企業で採用に関わる中で、内定辞退の多くは「採用プロセスの設計」に原因があると感じています。その改善方法をお伝えします。


内定辞退が起きる本質的な理由

理由① 候補者の「志望度」が十分に高まっていない

内定辞退の最も根本的な原因は、候補者の志望度が十分に高まらないまま内定が出されていることです。面接は「候補者を選ぶ場」であると同時に「候補者に選んでもらう場」でもあります。企業側が候補者を評価しているのと同じくらい、候補者も企業を評価しています。

採用プロセスの中で、候補者の志望度を段階的に高めていく設計がなければ、内定を出しても「他にもっと良い会社があるかもしれない」と考えて辞退されます。

理由② 内定後の「不安」が解消されていない

内定を受けてから入社までの間に、候補者は様々な不安を抱えます。「本当にこの会社で大丈夫だろうか」「職場の雰囲気はどうだろう」「上司になる人はどんな人だろう」——こうした不安が解消されないまま放置されると、「やっぱりやめておこう」という判断につながります。

理由③ 「条件面」での競争に負けている

年収、福利厚生、勤務地——条件面で他社に負けているケースもあります。特に京都の中小企業は、大阪や東京の大企業と比較されると、条件面では不利になりがちです。

ただし、条件面だけで辞退を決めている候補者は、実は多くありません。条件面の差が「志望度の差」を埋められないほど大きい場合に辞退が起きるのであり、志望度が十分に高ければ、多少の条件差は許容されることが多いのです。

理由④ 採用プロセスの「スピード」が遅い

書類選考の結果連絡に2週間、面接の日程調整に1週間、最終面接の結果連絡に10日——こうした遅さは、候補者の心が離れる原因になります。特に、他社も並行して選考を進めている候補者にとって、プロセスの遅い企業は「この会社は本気で採用する気があるのか?」と映ります。


採用プロセス改善の具体的な方法

改善① 「候補者の志望度」を段階的に高める設計

採用プロセスを「候補者の志望度を段階的に高めていくプロセス」として設計します。各段階で、候補者に「この会社に入りたい」と思わせる要素を盛り込みます。

書類選考段階での工夫:

  • 書類選考の結果連絡を速やかに行う(できれば3営業日以内)
  • 結果連絡の際に、面接の日程候補を同時に提示する
  • 面接前に、会社の魅力を伝える資料(社員インタビュー、職場の写真など)を送る

一次面接での工夫:

  • 面接官が候補者の経歴をしっかり読み込んでいることを示す
  • 一方的な質問ではなく、対話形式にする
  • 候補者からの質問時間を十分に確保する
  • 面接の最後に、「ぜひ次のステップに進んでいただきたい」という前向きなメッセージを伝える

最終面接での工夫:

  • 経営者が直接、会社のビジョンや候補者への期待を語る
  • 候補者が入社後に担当する業務の具体的なイメージを伝える
  • 「あなたに来てほしい」という熱意を伝える

京都のあるIT企業(従業員70名)では、面接を「選考」から「相互理解の場」に変えたことで、内定辞退率が40%から15%に改善しました。「面接官のトレーニングを行い、『候補者を評価する面接』から『候補者に選んでもらう面接』に意識を変えた。具体的には、候補者の質問に丁寧に答える時間を倍にした」と採用担当者は話します。

改善② 面接の「スピード」を上げる

採用プロセス全体のスピードを上げます。

目標とするスピード:

  • 書類選考の結果連絡:応募から3営業日以内
  • 一次面接の実施:書類選考通過から1週間以内
  • 最終面接の実施:一次面接から1週間以内
  • 内定通知:最終面接から3営業日以内
  • 全プロセス:応募から内定まで3週間以内

京都の中小企業が大企業と戦えるポイントの一つが「スピード」です。大企業は意思決定に時間がかかりますが、中小企業は経営者が直接判断できるため、プロセスを短縮できます。このスピードを武器にすることが重要です。

改善③ 「オフィス見学」や「社員との交流」を組み込む

採用プロセスの中に、オフィス見学や現場社員との交流の機会を設けます。候補者にとって、「実際の職場を見る」「一緒に働く人と話す」ことは、志望度を高める大きな要素です。

京都のある精密機器メーカーでは、最終面接の前に「職場見学+ランチ」の時間を設けています。「候補者を配属予定の部署に案内し、実際に働いている社員と一緒にランチを食べてもらう。候補者は職場の雰囲気を肌で感じられるし、社員も候補者に直接会社の魅力を伝えられる。この取り組みを始めてから、内定辞退率が明らかに下がった」と人事担当者は話します。

改善④ 「内定後フォロー」を充実させる

内定を出した後の「内定者フォロー」が、辞退防止の鍵です。内定から入社までの間に、候補者との接点を維持し、不安を解消していきます。

内定後フォローの具体例:

  • 内定通知は電話で行い、歓迎の気持ちを直接伝える
  • 内定通知書に、採用の決め手となった候補者の強みを明記する
  • 内定後1週間以内に、上司になる社員との面談を設定する
  • 入社前に、配属部署のメンバーとの交流の場をつくる
  • 入社前研修や勉強会への参加を促す
  • 定期的に人事から連絡を入れ、質問や不安に対応する

大阪のある商社では、内定者に「ウェルカムレター」を送っています。「会社のロゴ入りのレターに、社長からの歓迎メッセージ、配属部署のメンバーからの一言メッセージを添えて送る。手間はかかるが、これを受け取った候補者からは『こんなに歓迎されると思わなかった』という声が返ってくる」と採用担当者は話します。

改善⑤ 「条件面」の伝え方を工夫する

条件面で大企業に勝てない場合でも、「条件の伝え方」を工夫することで印象を変えることは可能です。

工夫のポイント:

  • 年収だけでなく「トータルリワード」を示す(通勤の利便性、残業の少なさ、有給取得率、成長機会など金銭以外の価値も含めて提示)
  • 将来のキャリアパスと報酬の見通しを伝える
  • 京都で働くことの魅力(通勤時間の短さ、生活コストの低さ、文化的環境)を伝える
  • 中小企業ならではの裁量の大きさ、成長スピードの速さを具体的に伝える

京都の企業ならではの「採用の強み」を活かす

京都には、大阪や東京にはない独自の魅力があります。この魅力を採用プロセスに織り込むことで、候補者の志望度を高めることができます。

強み① 歴史と伝統

京都には、100年以上の歴史を持つ企業が多数あります。歴史と伝統は、企業の安定性と信頼性の証です。「この会社は100年続いてきた。これからも続いていく」——長期的なキャリアを考える候補者にとって、歴史の長さは大きな安心材料です。

強み② 文化的環境

京都の文化的な環境は、生活の質を重視する候補者にとって大きな魅力です。「京都で働き、京都で暮らす」というライフスタイルの魅力を、採用プロセスの中で伝えます。

強み③ 技術力とものづくりの伝統

京都の製造業は、高い技術力で知られています。精密機器、電子部品、伝統工芸——技術にこだわりを持つ候補者にとって、京都のものづくりの環境は魅力的です。

強み④ コンパクトな街の利便性

京都は都市としてのコンパクトさがあり、通勤時間が短い、生活圏がコンパクトでまとまっているなど、ワークライフバランスの面で優位性があります。


内定辞退を「ゼロ」にすることはできない

内定辞退を完全になくすことは、現実的ではありません。候補者にはそれぞれの事情があり、他社の内定、家族の意向、条件面の比較——企業側ではコントロールできない要因も多いからです。

重要なのは、「コントロールできる部分」を改善することです。採用プロセスの設計、面接の質、内定後のフォロー——これらは企業側の努力で改善可能な領域です。この領域を徹底的に改善することで、内定辞退率を下げることができます。

また、内定辞退が起きた際に、辞退の理由を丁寧にヒアリングし、データとして蓄積・分析することも重要です。辞退理由の傾向を把握することで、次の採用プロセスの改善につなげられます。


まとめ:採用は「内定」がゴールではない

採用活動のゴールは、「内定を出すこと」ではなく、「候補者に入社してもらうこと」です。そして、その先にある「入社した人材が活躍すること」が真のゴールです。

内定辞退は、採用プロセスのどこかに課題があることを示す「シグナル」です。そのシグナルを見逃さず、プロセスを改善していくことが、採用力を高めるための道です。

京都の企業には、大企業にはない魅力があります。歴史、文化、技術、人の温かさ——こうした魅力を、採用プロセスの中で候補者にしっかり伝えること。そして、候補者が「この会社で働きたい」と心から思えるような採用体験を提供すること。それが、内定辞退を減らすための最も本質的な方法です。

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