大阪の人材サービス企業に学ぶ、自社の採用力を高める方法
採用・選考

大阪の人材サービス企業に学ぶ、自社の採用力を高める方法

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大阪の人材サービス企業に学ぶ、自社の採用力を高める方法

「人材紹介会社に頼りすぎてて、自分たちで採れなくなってしまいました」

大阪・淀屋橋のあるIT企業の人事部長が、正直にそう打ち明けてくれました。エンジニアの採用はすべて人材紹介会社経由。紹介手数料は一人あたり年収の35%。年間10名採用すれば、手数料だけで3,000万円を超える。「自社で採用する力」を失ったまま、人材サービス会社に依存し続けている——この状況に危機感を感じ始めていました。

大阪は人材サービス産業が集積する都市です。梅田、本町、淀屋橋——このエリアには、大手人材紹介会社、派遣会社、採用コンサルティング会社が数多く拠点を構えています。人材サービス企業は「人を採る」ことを本業とするプロフェッショナルであり、その手法やノウハウには多くの学びがあります。

私はこれまで500社以上の企業で人事に関わってきましたが、人材サービス企業の「採用のプロ」としてのノウハウを、一般企業が自社の採用力強化に活かすことは十分可能だと考えています。人材サービス企業に「丸投げ」するのではなく、彼らのノウハウから「学ぶ」。この姿勢が、自社の採用力を根本的に高める鍵になります。

この記事では、大阪の人材サービス企業のノウハウから学び、自社の採用力を高めるための考え方について、一緒に考えてみたいと思います。


人材サービス企業が持つ「採用の5つのプロスキル」

人材サービス企業が日常的に実践している「採用のプロスキル」を5つ紹介します。これらは、一般企業の人事担当者も身につけることができるスキルです。

プロスキル① 「求職者心理」の深い理解

人材紹介のコンサルタントは、求職者の「表面的な希望」の裏にある「本当の動機」を引き出す訓練を受けています。「年収を上げたい」の裏には「正当に評価されたい」があり、「残業を減らしたい」の裏には「家族との時間を大切にしたい」がある。

この「本当の動機」を理解した上で自社の魅力を伝えることが、採用の成否を分けます。

大阪のある中堅人材紹介会社のマネージャーは、「求職者の『不満』を聞くのではなく、『理想の未来』を聞く」ことが大切だと話してくれました。「今の会社の何が不満ですか」ではなく、「3年後にどんな自分になっていたいですか」——この問いへの答えが、その求職者に自社がどう貢献できるかを考えるヒントになります。

自社の採用面接でも、この「求職者心理の理解」を実践してみてください。候補者の本当の動機を理解した上で、自社がその動機にどう応えられるかを具体的に伝える。これだけで、面接の質と内定承諾率が変わります。

プロスキル② 「求人の魅力化」の技術

人材紹介会社のコンサルタントは、「企業の魅力」を求職者に伝えるプロです。しかし、彼らが伝えているのは「企業が書いた求人票の情報」だけではありません。企業訪問や経営者へのインタビューを通じて得た「生の情報」——社長の人柄、職場の雰囲気、仕事のやりがい、将来のビジョン——こうした「温度感のある情報」を伝えることで、求人の魅力を何倍にも高めています。

これは自社でもできることです。求人票に「条件」だけを書くのではなく、「この仕事の面白さ」「一緒に働く人の雰囲気」「会社の将来ビジョン」を具体的に盛り込む。社員のインタビューや職場の写真・動画を活用する。「条件の説明」から「仕事の物語」への転換が、求人の魅力化の核心です。

プロスキル③ 「スカウティング」の技術

人材紹介会社は「待ちの採用」ではなく「攻めの採用」を行っています。求職者データベースを検索し、適切な候補者に直接アプローチする「スカウティング」は、受動的な求人広告とは異なる効果を発揮します。

自社でも、LinkedIn、Wantedly、ビズリーチなどのプラットフォームを活用して、直接候補者にアプローチすることは可能です。大切なのは、「一括配信のスカウトメール」ではなく、「その人のプロフィールをしっかり読んだ上での、パーソナライズされたアプローチ」をすること。

大阪・梅田のあるWeb制作会社(従業員20名)では、人事担当者がWantedlyで「面白いプロフィール」の人に、「あなたのポートフォリオのこのプロジェクトに共感しました。うちでこんなプロジェクトを一緒にやりませんか」という個別メッセージを送る活動を月に10通行っています。返信率は約20%で、そこから年間2〜3名の採用につながっているそうです。

プロスキル④ 「選考プロセスの最適化」

人材紹介会社は、「候補者が選考プロセスのどの段階で離脱しているか」を常にモニタリングしています。書類選考の通過率、面接の辞退率、内定承諾率——各段階の数字を見て、ボトルネックを特定し、改善する。

自社の採用でも、この「プロセスの数字管理」を行うことで、大きな改善が期待できます。

「書類応募は多いが面接に来ない」→ 面接日程の調整が遅い、面接場所がわかりにくい 「面接は好感触だが内定を辞退される」→ 内定から承諾までのフォローが薄い、競合他社との差別化ができていない

大阪のある製造業(従業員100名)では、採用プロセスの各段階の「歩留まり」を初めて分析したところ、「一次面接から二次面接までの辞退率が50%」であることが判明しました。原因を調べると、一次面接から二次面接までの間隔が3週間もあり、候補者が「待ちくたびれて他社に決めてしまう」パターンが多かった。面接間隔を1週間に短縮したところ、辞退率が15%に改善しました。

プロスキル⑤ 「候補者体験(CX)」の設計

人材紹介会社は、候補者にとっての「体験」を重視しています。求人への応募から内定承諾まで、候補者がどのような「体験」をするかが、企業の印象と採用成功率を左右します。

応募への迅速な返信、面接日程の柔軟な調整、面接官の丁寧な対応、選考結果のタイムリーなフィードバック——こうした「候補者への誠実な対応」の積み重ねが、「この会社で働きたい」という気持ちを育てます。

逆に、「応募後3日間連絡がない」「面接で一方的に質問されるだけ」「不採用の連絡が遅い」——こうした体験は、候補者の企業への印象を大きく損ないます。


人材サービス会社との「賢い付き合い方」

自社の採用力を高めることは、人材サービス会社との関係を断つことではありません。「依存」から「協働」への関係転換が理想です。

使い分けの考え方

  • 自社で対応すべき領域:採用ブランディング、社内のリファラル採用、新卒採用の一部、応募者対応の品質管理
  • 人材サービス会社に依頼すべき領域:特殊スキルの人材サーチ、緊急度の高い採用、経営幹部クラスの採用

「すべてを自社でやる」必要はありません。「自社でできること」と「プロに任せるべきこと」を明確に区分し、それぞれに適切なリソースを投入する。

人材紹介会社の「良いパートナー」を見極める

大阪には多くの人材紹介会社がありますが、すべてが良いパートナーになるとは限りません。自社の業界や職種に精通しているか、担当コンサルタントの質は高いか、候補者の量ではなく質を重視しているか——こうした点を基準にパートナーを選ぶことが重要です。

神戸のあるメーカー(従業員80名)では、取引する人材紹介会社を3社に絞り、各社の担当者を自社のオフィスに招いて「会社説明会」を行っています。「うちの会社のことをよく知ってもらう」ことで、紹介される候補者の質が格段に向上したと評価しています。


自社の「採用力」を測定する——3つの指標

自社の採用力がどの水準にあるのかを把握するために、3つの指標を定期的にモニタリングすることをお勧めします。

指標① 採用チャネル別のROI

各採用チャネル(求人媒体、人材紹介、リファラル、自社HP、SNSなど)ごとに、「投入コスト」と「採用人数」「1年後定着率」を計算します。チャネルごとの「一人あたり採用コスト」と「定着率」を比較することで、どのチャネルに投資すべきかが見えてきます。

大阪のあるメーカー(従業員90名)では、この分析を行った結果、人材紹介会社経由の採用は一人あたり120万円、自社HPからの応募は一人あたり15万円であることが判明。さらに、自社HPからの応募者の方が1年後定着率が高かった。この事実を受けて、自社HPの充実に投資を振り向け、2年間で人材紹介会社への依存度を60%から25%に削減しました。

指標② 内定承諾率

内定を出した候補者のうち、何%が承諾するか。この数値が低い場合、「候補者体験の質」「自社の魅力の伝え方」「競合他社との差別化」に問題がある可能性があります。

指標③ 採用リードタイム

求人を出してから入社までにかかる平均日数。この期間が長いほど、「採用プロセスの効率」に改善の余地があります。関西の中小企業の平均的な採用リードタイムは60〜90日程度ですが、プロセスの改善により30〜45日に短縮できるケースが多い。


「採用力」は「組織の総合力」

採用力を高めるということは、「人事部の採用スキルを上げる」だけの話ではありません。

自社の事業の魅力、職場環境の質、社員の満足度、経営者のビジョン——こうした「組織の総合力」が、採用力の根幹を形成しています。「良い会社」であることが、最も効果的な採用戦略です。

人材サービス企業のノウハウから学びつつ、自社の組織そのものを磨き続ける。この両輪が回って初めて、持続可能な採用力が構築されます。

採用力の向上は「コスト削減」だけではなく、「組織の質の向上」にもつながります。自社で採用する力があるということは、「どんな人材が自社に合うか」を深く理解しているということであり、「自社の魅力を自分の言葉で語れる」ということです。これは、人材サービス会社に丸投げしていては得られない組織の力です。

人材サービス企業が持つノウハウは、「使う」のではなく「学ぶ」対象です。彼らのプロスキルを自社に取り込み、自分たちの力で採用活動を回せる組織を目指す。この転換が、関西の中小企業の採用を根本から変える力になると信じています。

関西の中小企業が、人材サービス企業への「依存」から脱却し、自社の力で良い人材を惹きつけ、採用し、定着させる力を身につけていくこと。その実現に向けて、一緒に考えていきたいと思います。


まとめ:自社の採用力向上チェックリスト

  • [ ] 求職者の「本当の動機」を理解する面接ができているか
  • [ ] 求人票は「条件の羅列」ではなく「仕事の魅力」が伝わる内容か
  • [ ] ダイレクトスカウティング(攻めの採用)を実践しているか
  • [ ] 採用プロセスの各段階の「歩留まり」を数字で把握しているか
  • [ ] 候補者体験(CX)を意識した対応ができているか
  • [ ] 人材サービス会社との関係が「依存」ではなく「協働」になっているか
  • [ ] 自社で対応する領域とプロに任せる領域を明確に区分しているか
  • [ ] 採用力の基盤としての「組織の総合力」を磨き続けているか
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