関西の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法
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関西の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法

#エンゲージメント#採用#評価#研修#組織開発

関西の企業が「組織風土改革」を一過性にしない方法

「3年前に組織風土改革のプロジェクトを立ち上げたんです。外部のコンサルタントにも入ってもらい、社員アンケートを実施し、ワークショップを開催し、行動指針をつくった。最初の1年は社内の雰囲気が変わった実感がありました。でも、2年目の後半くらいから元に戻り始めて——いまは、ほとんど改革前と変わらない状態です」

京都・四条にある老舗の食品メーカーの人事部長が、苦笑しながらそう話してくれました。従業員350名。創業70年。長い歴史の中で形成された組織風土は、良くも悪くも根深い。トップダウンの意思決定、部門間のセクショナリズム、「前例踏襲」の文化——これらを変えようとプロジェクトを立ち上げたが、一過性で終わってしまった。

「組織風土改革が一過性で終わる」——これは関西の企業に限らず、多くの企業が経験する問題です。しかし、関西の企業で特にこの問題が起きやすい背景があると感じています。長い歴史を持つ老舗企業が多いこと、「変えんでええ」という保守的な意識が残りやすいこと、人間関係の密度が高く既存の関係性に配慮して変革が進みにくいこと——これらの要因が、組織風土改革を一過性にしてしまうリスクを高めています。

私は関西の企業で組織風土改革に関わる中で、「一過性で終わる改革」と「定着する改革」の違いがどこにあるのかを考え続けてきました。その経験をもとに、組織風土改革を一過性にしないための方法をお伝えします。


なぜ組織風土改革は一過性で終わるのか

組織風土改革が一過性で終わる原因は、大きく5つあります。

原因① 「イベント」として取り組んでいる

組織風土改革を、特別なプロジェクトやイベントとして位置づけてしまうと、プロジェクト期間が終われば活動も終わります。キックオフミーティング、ワークショップ、社員アンケート——これらはすべて「イベント」です。イベントには「始まり」と「終わり」がある。イベントが終われば、日常業務に戻る。

大阪のある中堅商社では、「組織風土改革プロジェクト」として半年間の活動を行いました。月に一度のワークショップ、全社アンケート、行動指針の策定——半年間は盛り上がりました。しかし、プロジェクトの「完了報告会」を行った後、活動は急速に収束しました。「プロジェクトは完了した」という認識が広がり、日常に組み込まれることなく終わったのです。

原因② 「仕組み」に落とし込んでいない

風土改革で掲げた理念や行動指針が、人事制度や業務プロセスに反映されていない。「挑戦を奨励する」という行動指針を掲げながら、評価制度は「失敗しないこと」を重視している。「部門横断の連携」を謳いながら、組織構造は縦割りのまま——理念と仕組みの矛盾が、改革を形骸化させます。

原因③ ミドルマネジメント(管理職)の巻き込みが不十分

組織風土改革は、経営トップが旗を振り、人事部門が事務局を務めるケースが多い。しかし、実際に組織風土をつくっているのは、日常的に部下と接している管理職です。管理職が改革の意義を理解し、自らの行動を変えなければ、組織風土は変わりません。

神戸のある製造業では、経営層は強い意志を持って風土改革を推進していましたが、中間管理職層の反応は冷ややかでした。「また新しいプロジェクトが始まった」「どうせすぐに終わる」——こうした冷めた空気が管理職層に広がると、その下の一般社員にも伝染します。

原因④ 成果を「測定」していない

組織風土改革の成果を定量的に測定していないと、改革が進んでいるのかどうかがわからない。わからないから、手応えが得られず、活動のモチベーションが低下する。結果として、活動が自然消滅してしまう。

原因⑤ 経営環境の変化で優先順位が下がる

業績が悪化したり、M&Aや組織再編があったりすると、組織風土改革の優先順位が下がる。「いまはそれどころではない」という判断が下され、活動が凍結される。しかし、業績が悪化しているときこそ、組織風土が問われる局面です。


組織風土改革を「日常」に埋め込む

組織風土改革を一過性にしないための最も重要な考え方は、改革を「特別なプロジェクト」ではなく「日常の仕組み」に埋め込むことです。

日常化のアプローチ① 会議体の設計を変える

組織風土は、日常の会議の中でつくられています。会議のあり方を変えることは、組織風土を変えることに直結します。

具体的な変更点として、まず「発言の順番」を変える。役職の高い人から発言する慣行をやめ、若手から発言する順番にする。あるいは、匿名で意見を出せるツールを使い、役職に関係なく意見を出せる場をつくる。

京都のある老舗メーカーでは、部門会議の冒頭に「チェックイン」の時間を設けました。業務の話をする前に、一人一言、いま感じていることや気になっていることを話す。最初は照れくさそうにしていた社員も、3か月もすると自然に自分の考えを話せるようになった。この「チェックイン」が、部門内のコミュニケーションの質を変えていきました。

次に「議論のルール」を設定する。批判から入らない。相手の意見を一度受け止めてから自分の意見を言う。結論を急がず、複数の選択肢を検討する——こうした議論のルールを明文化し、会議の冒頭で確認する。

日常化のアプローチ② 人事制度との連動

組織風土改革で掲げた行動指針を、評価制度に組み込む。単に「能力」や「成果」を評価するだけでなく、「行動指針に沿った行動をとっているか」を評価項目に加える。

大阪のあるIT企業では、評価の30%を「バリュー評価」として、会社の行動指針に沿った行動を評価しています。「挑戦したか」「周囲と協働したか」「率直にフィードバックしたか」——具体的な行動事例をもとに評価する。

ただし、行動指針の評価を導入する際には注意が必要です。抽象的な評価基準では、評価者によってばらつきが生じます。行動指針ごとに、具体的な行動例(「この行動はバリュー体現の例」「この行動はバリューに反する例」)を定義し、評価者の目線を揃える必要があります。

日常化のアプローチ③ 採用基準への反映

組織風土を変えるためには、新たに加わる人材の採用基準にも風土を反映する。スキルや経験だけでなく、「自社の行動指針に共感し、体現できる人材か」を採用の判断基準に加える。

採用面接の中で、行動指針に関する質問を組み込む。たとえば、「前職で、周囲と意見が対立した場面でどう行動しましたか」「これまでに挑戦して失敗した経験を教えてください」——行動指針の要素を、過去の行動事実として確認する。

日常化のアプローチ④ 物理的な環境の変更

組織風土は、物理的な環境にも影響されます。部門間の壁を取り払うオフィスレイアウト、気軽に話せるコミュニケーションスペース、チーム横断の座席配置——物理的な環境を変えることで、行動が変わり、行動が変わることで風土が変わる。

神戸のある中堅企業では、各フロアに「立ち寄りカフェ」と名づけたフリースペースを設置しました。コーヒーと簡単なお菓子を置き、部門を超えた社員が自然に集まる場をつくった。最初は利用者が少なかったものの、半年ほどで「カフェで話したアイデアがプロジェクトになった」という事例が生まれ始め、部門横断のコミュニケーションが活性化しました。


管理職を「風土改革の推進者」にする

組織風土改革の成否は、管理職が改革の推進者になれるかどうかにかかっています。管理職が日常のマネジメントの中で新しい風土を体現しなければ、どんな理念や行動指針も絵に描いた餅です。

管理職の行動変容を支援する仕組み

まず、管理職自身に「現在の自分のマネジメントスタイル」を自覚してもらう。部下からのフィードバック(360度フィードバック)を実施し、「自分が思っている自分」と「部下から見た自分」のギャップを認識する。

次に、管理職同士のピアラーニング(相互学習)の場をつくる。月に一度、管理職が集まり、マネジメントの課題や工夫を共有する場を設ける。外部研修ではなく、自社の管理職同士が学び合う場。同じ組織の中で同じ課題に向き合っている仲間の存在が、行動変容を支える。

大阪のある中堅メーカーでは、月に一度の「マネジメント対話会」を実施しています。管理職10名が集まり、その月に直面したマネジメントの課題を一つ持ち寄り、全員で対話する。「正解を教える」のではなく、「一緒に考える」場。この場が、管理職同士の信頼関係を築き、風土改革を自分ごとにするきっかけになっています。

さらに、管理職の評価項目に「組織風土への貢献」を加える。部下のエンゲージメントスコア、チーム内のコミュニケーションの質、部門横断の連携の実績——これらを管理職の評価指標に組み込むことで、風土改革が管理職の業務の一部として位置づけられます。


組織風土改革の「測定」と「可視化」

組織風土改革の成果を測定し、可視化することは、改革を持続させるために不可欠です。

定期的なパルスサーベイの実施

年に一度の大規模な社員アンケートではなく、月に一度または四半期に一度の短いパルスサーベイ(5〜10問程度)を実施する。組織風土に関するシンプルな質問を定点観測することで、風土の変化を継続的に把握できます。

パルスサーベイの質問例を挙げます。「自分の意見を安心して言える雰囲気がある」「上司は自分の話を傾聴してくれる」「部門を超えた協力が行われている」「新しいことに挑戦することが奨励されている」「会社の方向性が明確に伝えられている」——これらの質問を5段階で回答してもらい、スコアの推移を追跡する。

定性情報の収集

数字だけでは組織風土の実態は見えません。定性的な情報も収集する。社員インタビュー、フォーカスグループ、自由記述のアンケート——数字の裏側にある「生の声」を拾い上げることが重要です。

京都のある企業では、四半期ごとにランダムに選ばれた社員10名に対して、30分の個別インタビューを実施しています。人事担当者が直接話を聞く。このインタビューから、アンケートでは拾えない組織の実態が見えてきます。

経営会議での定期報告

組織風土の測定結果を、経営会議で定期的に報告する。業績報告と同じ位置づけで、組織風土の現状を経営層に共有する。これにより、組織風土改革が経営課題として位置づけられ、優先順位が下がるリスクを低減できます。


関西企業の「強み」を活かした風土改革

関西の企業には、組織風土改革を持続させる上で活かせる強みがあります。

「人と人のつながり」を重視する文化

関西の企業は、人と人との関係性を大切にする傾向があります。この特性を、組織風土改革に活用する。トップダウンの号令で風土を変えるのではなく、人と人との対話を通じて少しずつ風土を変えていく。

具体的には、「対話の場」を意図的に設ける。部門横断のランチミーティング、世代を超えたメンター制度、経営層と若手の少人数座談会——これらの「対話の場」が、組織風土の変化の起点になります。

「商売人」の合理性

関西には「損して得取れ」「商売は信用が第一」といった商売人の合理的な考え方が根づいています。組織風土改革も、「良い風土をつくることが、結果として事業の成果につながる」という合理的な文脈で語ることで、経営層の理解を得やすくなります。

風土改革の成果を事業成果と結びつけて語る。離職率の低下はどれだけの採用コスト削減につながったか。エンゲージメントスコアの向上は生産性にどう影響したか。部門横断の連携は新しい事業機会をどれだけ生み出したか。経営数字との接続が、風土改革の持続性を支えます。

「老舗」の変革力

関西には創業100年を超える老舗企業が数多くあります。老舗が老舗として生き残ってきたのは、「変わらなかった」からではなく、「変わり続けてきた」からです。伝統を守りながらも、時代の変化に応じて自らを変革してきた——その歴史は、組織風土改革のロールモデルでもあります。

「うちは老舗やから変えられへん」ではなく、「老舗やからこそ、変わり続ける力がある」——この発想の転換が、関西の老舗企業の風土改革を後押しします。


一過性にしないための3つの原則

最後に、組織風土改革を一過性にしないための3つの原則をまとめます。

原則① 「プロジェクト」ではなく「習慣」にする

組織風土改革を特別なプロジェクトとして切り出さず、日常の業務プロセスや会議、コミュニケーションの中に組み込む。「改革をやっている」という意識がなくなったとき、改革は定着したと言える。

原則② 「制度」と「行動」を一致させる

掲げた理念や行動指針と、人事制度・評価制度・採用基準を一致させる。制度が行動を後押しする設計になっていなければ、理念はお題目に終わる。

原則③ 「測定」と「改善」を続ける

組織風土の状態を定期的に測定し、その結果をもとに改善を続ける。完成形があるわけではない。組織の状況は常に変化しており、風土改革もまた終わりのない取り組みです。

組織風土は、一朝一夕には変わりません。しかし、日常の中に変化の種を埋め込み、それを丁寧に育てていくことで、確実に変わっていきます。一過性のイベントではなく、持続的な習慣として——関西の企業が、自社の強みを活かしながら風土改革を定着させていくことを願っています。


人事図書館では、組織風土改革や組織開発に関する実践的な知見を共有しています。関西の企業の人事担当者同士がつながり、学び合える場です。

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