大阪の企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか
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大阪の企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか

#エンゲージメント#評価#研修#組織開発#キャリア

大阪の企業がアジャイル組織で人事をどう設計するか

「うちの会社、開発部門はアジャイルで動いているんですが、人事制度は完全にウォーターフォール型のままなんです。評価は年に2回、目標設定は期初に一括——開発の現場では2週間ごとにスプリントレビューをやっているのに、人事の仕組みが追いついていない」

大阪・本町にあるIT企業の人事マネージャーが、そう打ち明けてくれました。従業員200名。3年前にプロダクト開発にアジャイル手法を導入し、開発スピードは大幅に向上した。しかし、人事制度はアジャイル導入前のまま。評価制度、等級制度、異動の仕組み——すべてが「計画を立て、実行し、年度末に振り返る」という従来型のサイクルで動いている。

「アジャイルに働いている人たちを、ウォーターフォール型の人事制度で評価している。この矛盾に、現場から不満の声が上がっています」

私は大阪の企業で人事に携わる中で、アジャイル組織に移行した企業、あるいは移行しようとしている企業が、人事の設計に苦心している場面を何度も見てきました。アジャイルは単なる開発手法ではなく、組織のあり方そのものに影響を及ぼします。人事制度もまた、アジャイルの考え方にあわせて再設計する必要がある。

しかし、「アジャイル型の人事制度」とは何か。これは簡単に答えが出る問いではありません。唯一の正解があるわけではなく、自社の事業特性、組織の成熟度、社員の特性にあわせて設計していくしかない。

本稿では、大阪の企業の事例をもとに、アジャイル組織における人事設計の考え方と実践のポイントをお伝えします。


アジャイル組織とは何か

まず、アジャイル組織の基本的な考え方を整理します。

アジャイルは元々、ソフトウェア開発の手法として生まれました。従来の「ウォーターフォール型」——要件定義、設計、開発、テスト、リリースを順番に行う手法——に対して、短い周期(スプリント)で開発とフィードバックを繰り返し、変化に柔軟に対応する手法です。

このアジャイルの考え方を組織運営全体に適用したのが「アジャイル組織」です。

アジャイル組織の特徴

第一に、小さなチーム単位で自律的に動く。大きなピラミッド組織ではなく、5〜10名程度のクロスファンクショナルなチームが、権限を持って意思決定し、成果を出す。

第二に、短い周期でのフィードバックと改善。年度計画を立てて1年後に評価するのではなく、2〜4週間のスプリントごとに成果を振り返り、次のアクションを決める。

第三に、変化への適応を前提とする。計画通りに進めることよりも、状況の変化に応じて柔軟に方針を変えることを重視する。

第四に、役割の流動性。固定的な職務記述書に基づく役割分担ではなく、プロジェクトやチームの状況に応じて役割が変わる。


なぜ従来の人事制度ではアジャイル組織に対応できないのか

従来の人事制度は、ウォーターフォール型の組織を前提に設計されています。そのため、アジャイル組織の特徴と噛み合わない部分が出てきます。

評価制度の不整合

従来の評価制度は、期初に個人目標を設定し、半年後または1年後に達成度を評価する仕組みが一般的です。しかし、アジャイル組織では、チームの目標やプロジェクトの方向性が2〜4週間ごとに見直されます。期初に設定した個人目標が、途中で意味を失うことが頻繁に起こる。

大阪のあるSaaS企業では、期初に設定した目標が四半期後にはほぼ全員変更になっていました。にもかかわらず、評価は期初の目標に基づいて行われる。現場からは「目標設定の意味がない」「評価が実態を反映していない」という声が上がっていました。

等級制度の不整合

従来の等級制度は、職位の階層(課長、部長など)や職能資格の段階に基づいています。しかし、アジャイル組織では、チームの中で役割が流動的に変わります。あるプロジェクトではスクラムマスターを務め、別のプロジェクトではメンバーとして参加する。職位の固定的な階層が、役割の流動性を阻害することがある。

配置・異動の不整合

従来の異動は、年に1〜2回、会社主導で行われるのが一般的です。しかし、アジャイル組織では、プロジェクトの立ち上がりや状況の変化に応じて、随時チーム編成を変える必要がある。年に1〜2回の異動サイクルでは対応しきれません。


アジャイル組織における人事設計の5つのポイント

ポイント① 評価の「頻度」と「対象」を変える

アジャイル組織では、評価の頻度を上げ、評価の対象を「個人の目標達成度」から「チームへの貢献度」に広げることが有効です。

具体的な仕組みとして提案するのは、「スプリントレビュー連動型フィードバック」です。2〜4週間のスプリントごとに、チーム内で相互フィードバックを行う。スプリントレビュー(成果の振り返り)の場で、業務の成果だけでなく、チームへの貢献やコラボレーションの質についてもフィードバックし合う。

大阪・梅田のあるスタートアップでは、2週間ごとのスプリントレビューに「チームフィードバック」の時間を15分追加しました。メンバー同士が「今スプリントで助けられたこと」「次スプリントで期待すること」を伝え合う。形式張った評価面談ではなく、日常のコミュニケーションの延長としてフィードバックを行う。

半期ごとの正式な評価の際には、このスプリントごとのフィードバックの蓄積を参考資料として活用します。評価者が半年分の記憶を頼りに評価するのではなく、リアルタイムのフィードバック記録に基づいて評価する。評価の精度が上がるだけでなく、評価に対する被評価者の納得感も向上します。

ポイント② 「役割」で報酬を設計する

アジャイル組織では、職位よりも「役割」が重要になります。等級制度を職位の階層ではなく、役割の種類と習熟度に基づいて設計し直す。

役割の例を挙げます。プロダクトオーナー(事業価値の判断と優先順位づけ)、スクラムマスター(チームの運営とプロセスの改善)、テックリード(技術的な判断と品質の担保)、メンバー(各領域の専門スキルによる貢献)——これらの役割ごとに、期待する成果と報酬レンジを設定する。

重要なのは、役割は固定ではないという点です。あるプロジェクトではスクラムマスターを務めた人が、別のプロジェクトではメンバーとして参加する。役割が変わっても報酬が大きく下がるわけではない——そういう柔軟な設計にしておくことが、役割の流動性を支えます。

大阪のある中堅IT企業では、従来の5段階の等級制度を「3つの役割レベル×専門スキルの深さ」というマトリクスに再設計しました。役割レベルは「個人貢献」「チーム貢献」「組織貢献」の3段階。それぞれの段階で、保有するスキルの種類と深さに応じて報酬が決まる。昇進ではなく「役割と専門性の拡張」として報酬が上がる仕組みです。

ポイント③ 配置・異動を「社内公募型」に転換する

アジャイル組織では、プロジェクトの立ち上がりに応じてチーム編成が変わります。会社主導の年次異動ではなく、社内公募型の配置転換を導入する。

具体的には、新しいプロジェクトやチームが立ち上がる際に、必要な役割とスキルを社内に公開し、社員が自ら手を挙げてチームに参加する仕組みをつくります。

大阪のあるWebサービス企業では、四半期ごとに「プロジェクトマーケットプレイス」という社内イベントを開催しています。各プロジェクトのオーナーが、プロジェクトの概要と必要な人材を5分でプレゼンし、社員が参加したいプロジェクトに応募する。マネージャーと社員の希望を調整し、チーム編成を決める。

この仕組みにより、「やらされ感」のない配置が実現し、社員のエンゲージメントが向上しました。また、社員が自分のキャリアを主体的に考えるきっかけにもなっています。

ポイント④ 人事部門自体をアジャイルに運営する

アジャイル組織に対応する人事制度を設計するためには、人事部門自体もアジャイルに運営することが効果的です。

人事の施策も「年度計画を立てて実行する」のではなく、「小さく試して、フィードバックを得て、改善する」というサイクルで動かす。新しい評価制度を全社に一斉導入するのではなく、まずは一つのチームで試行し、そのフィードバックを踏まえて改善し、徐々に対象を広げていく。

大阪のあるフィンテック企業の人事チームは、自分たち自身がスクラムを実践しています。2週間のスプリントで人事施策を進め、スプリントレビューで成果を振り返り、次のスプリントの優先順位を決める。人事チームがアジャイルを「体感」しているからこそ、現場のアジャイルチームに寄り添った人事制度を設計できる。

ポイント⑤ マネジメントの役割を再定義する

アジャイル組織では、管理職の役割が大きく変わります。指示命令型のマネジメントから、チームの自律性を支援するマネジメントへ。

具体的には、従来の「管理・統制」から、以下のような役割への転換が求められます。チームが成果を出すための障害を取り除く「サーバントリーダーシップ」。メンバーの成長を支援する「コーチング」。チーム間の連携を促進する「コネクティング」。組織の方向性を示す「ビジョン共有」。

人事制度としては、管理職の評価基準にこれらの要素を組み込む。「部下を管理できているか」ではなく、「チームの自律性を高めているか」「メンバーの成長を支援できているか」を評価する。


大阪のIT企業の特性を活かす

大阪のIT企業がアジャイル組織で人事を設計する際に、活かせる特性があります。

「やってみなはれ」の精神

大阪には、「やってみなはれ」——まずやってみるという精神が根づいています。アジャイルの「小さく試して、素早く学ぶ」という考え方と親和性が高い。人事制度の改革も、完璧な設計を目指してから導入するのではなく、まず一つのチームで試してみる。その結果から学び、改善していく。

フラットなコミュニケーション

大阪の企業には、比較的フラットなコミュニケーション文化があります。役職に関係なくものを言いやすい雰囲気がある。この文化は、アジャイル組織に必要な「心理的安全性」の土台になります。人事制度としては、この文化を制度面からも支える設計が有効です。

中小企業の機動力

大阪にはIT系の中小企業やスタートアップが多く集積しています。規模が小さいからこそ、人事制度の変更を素早く行える。全社で500名の制度を変えるのは大変ですが、50名であれば、四半期単位で制度を改善していくことが可能です。この機動力を活かさない手はありません。


段階的な移行のロードマップ

アジャイル組織への移行にあわせて、人事制度を一気に変えるのはリスクが高い。段階的に移行することが現実的です。

フェーズ1(1〜3か月目):現状把握と試行

まず、アジャイルチームの現場を観察し、現在の人事制度との不整合を洗い出す。同時に、一つのチームで「スプリントレビュー連動型フィードバック」を試行する。人事担当者自身がスプリントレビューに参加し、アジャイルの実態を理解することが重要です。

フェーズ2(4〜6か月目):フィードバックの仕組みの導入

試行の結果を踏まえ、フィードバックの仕組みをアジャイルチーム全体に拡大する。評価制度の見直しに着手する。管理職向けに「アジャイルマネジメント」の研修を実施する。

フェーズ3(7〜12か月目):評価・等級制度の再設計

評価制度を「チーム貢献型」に再設計する。等級制度を「役割型」に再設計する。社内公募型の配置転換の仕組みを導入する。

フェーズ4(13か月目以降):継続的な改善

アジャイルの考え方に基づき、人事制度自体を継続的に改善していく。四半期ごとに人事制度の「レトロスペクティブ(振り返り)」を行い、制度の課題を洗い出し、改善していく。


人事がアジャイルを理解するために

最後に、人事担当者がアジャイル組織に対応するために、必要な姿勢についてお伝えします。

アジャイル組織における人事設計は、人事担当者がアジャイルを「知っている」だけでは不十分です。「体感している」ことが重要です。可能であれば、人事担当者自身がアジャイルチームのスプリントレビューやレトロスペクティブに参加する。あるいは、人事チーム自身がアジャイルで業務を運営してみる。

制度を設計する側が、その制度の対象者の働き方を理解していなければ、的外れな制度になってしまう。逆に、現場の働き方を深く理解した上で設計された制度は、社員からの信頼を得られます。

アジャイル組織における人事設計に唯一の正解はありません。自社の事業特性、組織の文化、社員の特性にあわせて、自分たちなりの答えを見つけていくしかない。そして、その答えもまた、状況の変化に応じて更新し続けていく。

「完璧な制度をつくる」のではなく、「制度を継続的に改善し続ける仕組みをつくる」——それがアジャイル組織における人事設計の本質だと、私は考えています。


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