
関西の企業が「退職面談」から組織改善のヒントを得る方法
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関西の企業が「退職面談」から組織改善のヒントを得る方法
「退職する社員との面談って、形式的にはやっているんですけど、正直なところ、何を聞けばいいのかわからない。引き留めの場にするのも違う気がするし」
大阪・淀屋橋にある中堅のシステム開発会社の人事マネージャーが、率直にそう話してくれました。従業員160名。IT業界は人材の流動性が高く、年間の離職率は15%前後。毎年20名以上が退職していきますが、退職面談から得た情報が組織改善に活かされたことは、ほとんどないと言います。
「退職面談はやっているけど、形だけ」——この状況は、関西の企業で非常に多く見られます。退職者に「退職の理由は?」と聞いて、「一身上の都合です」と返される。それ以上踏み込めず、面談は5分で終わる。退職理由は「自己都合」として処理され、何のデータも残らない。
しかし、退職面談は、正しく設計・運用すれば、組織改善のための貴重な情報源になります。退職する社員は、在籍中の社員よりも率直に語ってくれることが多い。退職するからこそ言える本音が、組織の課題を映し出してくれるのです。
私は関西の企業で人事に関わる中で、退職面談を「引き留めの場」ではなく「組織改善のための情報収集の場」として設計することが重要だと考えています。その具体的な方法をお伝えします。
なぜ退職面談が「形骸化」するのか
原因① 退職面談の「目的」が不明確
多くの企業では、退職面談の目的が曖昧です。「引き留め」が目的なのか、「退職理由の把握」が目的なのか、「事務手続きの確認」が目的なのか——目的が定まっていないから、何を聞けばいいかわからず、形式的なやり取りで終わってしまいます。
原因② 面談する側が「聞く力」を持っていない
退職面談は、相手の本音を引き出すスキルが求められます。しかし、多くの場合、退職面談を担当するのは直属の上司か人事担当者で、面談のトレーニングを受けていない。質問が表面的になり、退職者が本音を語ってくれない。
原因③ 退職者が「本音を言いにくい」環境
退職する社員にとって、退職面談で本音を語ることにはリスクがあります。「悪い印象を残したくない」「次の転職先での確認で不利になるかもしれない」——こうした懸念から、当たり障りのない退職理由を述べるだけで終わってしまいます。
原因④ 得た情報が活用されない
たとえ退職者が本音を語ってくれたとしても、その情報が組織改善に活用されなければ意味がありません。退職面談の内容が「人事部の引き出し」に眠ったまま、経営や現場にフィードバックされない——これでは、退職面談を行うモチベーションも上がりません。
退職面談の「目的」を再定義する
退職面談の目的を明確に定義します。目的は3つに整理できます。
目的① 退職理由の正確な把握
「なぜこの社員は退職するのか」を正確に把握すること。表面的な理由(「家庭の事情」「キャリアアップ」)の裏にある、本質的な理由を理解することが重要です。
目的② 組織課題の情報収集
退職者から見た「この組織の課題」を聞き取ること。在職中は言えなかった不満や改善要望を、退職という区切りのタイミングで率直に語ってもらうことで、組織の課題を把握できます。
目的③ 円満な退職と関係の維持
退職する社員と良好な関係を維持すること。退職者がこの会社での経験を肯定的に振り返り、退職後も「あの会社はよかった」と思えるような退職のプロセスをつくることです。これは、企業の評判にも影響します。
退職面談の設計方法
設計ポイント① 面談の実施者を適切に選ぶ
退職面談を「誰が行うか」は非常に重要です。
直属の上司が行う場合:
- メリット:退職者の業務内容を理解しており、具体的な話ができる
- デメリット:上司自身が退職理由に関わっている場合、本音を聞き出しにくい
人事担当者が行う場合:
- メリット:第三者的な立場で客観的に話を聞ける。情報を組織全体の改善に活かしやすい
- デメリット:退職者の業務内容を詳しく知らない場合がある
理想的には、「人事担当者が面談を行い、必要に応じて直属の上司から補足情報を得る」という方法がお勧めです。退職者が最も本音を語りやすい相手は、直属の上司以外の第三者であることが多いからです。
神戸のあるメーカー(従業員130名)では、退職面談を人事課長が一人で担当しています。「上司が同席すると、社員は本音を言えない。人事課長と1対1で話すことで、『実は上司の○○が辛かった』という本音が出てくる」と人事部長は話します。
設計ポイント② 面談のタイミングを決める
退職面談のタイミングは、退職届の提出後、退職日の1〜2週間前が適切です。退職届を出した直後は感情的になっていることがあり、退職日の直前は業務の引き継ぎで忙しいためです。
設計ポイント③ 面談の環境を整える
面談は、プライバシーが確保された個室で行います。周囲に聞こえない環境でなければ、退職者は本音を語りにくい。
また、面談時間は30分〜1時間程度を確保します。短すぎると表面的なやり取りで終わり、長すぎると退職者に負担がかかります。
設計ポイント④ 質問項目を標準化する
退職面談で聞くべき質問を標準化し、面談シートを準備します。毎回同じ質問項目で面談を行うことで、データの蓄積と分析が可能になります。
基本的な質問項目:
- 退職の主な理由は何ですか(複数可)
- 退職を考え始めたのはいつ頃ですか
- 退職を考えたきっかけとなる出来事はありましたか
- この会社で働いてよかったと思うことは何ですか
- この会社で改善してほしいと思うことは何ですか
- 上司のマネジメントについて、率直な感想を教えてください
- 職場の人間関係について、率直な感想を教えてください
- 評価や処遇について、不満に感じたことはありますか
- キャリア開発の機会について、十分だったと思いますか
- この会社を友人や知人に勧めたいと思いますか
- 退職を思いとどまる可能性はあったと思いますか。もしあったとしたら、どんな条件であれば思いとどまりましたか
退職者から「本音」を引き出すための面談テクニック
テクニック① 最初に「目的」を伝える
面談の冒頭で、「この面談は引き留めのためではなく、組織をよくするための情報を教えてほしい」と明確に伝えます。引き留めが目的でないとわかれば、退職者は安心して話しやすくなります。
「○○さんにはこれまで本当にお世話になりました。今日は、○○さんが退職される前に、この会社をもっとよくするためのヒントを教えていただきたいと思っています。率直なご意見をいただけると、とてもありがたいです」
テクニック② 「感謝」から始める
面談は、退職者への感謝の言葉から始めます。「○○さんがこの会社で貢献してくれたことに感謝しています」——感謝の気持ちが伝わることで、退職者の心が開きやすくなります。
テクニック③ オープンクエスチョンを使う
「はい/いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンではなく、退職者が自由に語れるオープンクエスチョンを使います。
避けるべき質問:「上司に不満がありましたか?」(はい/いいえで終わる) 良い質問:「上司との関係で、印象に残っていることを教えてください」(自由に語れる)
テクニック④ 沈黙を恐れない
退職者が考えている間の「沈黙」を、焦って埋めないことが重要です。沈黙の後に、深い本音が出てくることがあります。
テクニック⑤ 最後に「最も大切なこと」を聞く
面談の最後に、「最後に一つだけ。この会社がもっとよくなるために、最も大切だと思うことを一つ教えてください」と聞きます。この質問に対する回答が、最も核心をついた情報であることが多いのです。
京都のあるメーカーの人事担当者は、「この最後の質問に対する回答が、退職面談で最も価値がある情報だと感じています。退職者が一番言いたかったことが、ここに凝縮されるんです」と話します。
退職面談データの分析と活用
ステップ① データを蓄積する
退職面談の内容を、標準化されたフォーマットで記録・蓄積します。個人が特定されない形で、退職理由のカテゴリ、改善要望の内容、部門別・等級別・勤続年数別のデータを蓄積します。
ステップ② 定期的に分析する
蓄積されたデータを、半期または年に1回分析します。
分析の視点:
- 退職理由の上位3つは何か(全社、部門別、等級別)
- 退職理由に変化があるか(前年との比較)
- 特定の部門に退職が集中していないか
- 特定の上司の下で退職が多発していないか
- 改善要望として最も多く挙がるテーマは何か
ステップ③ 経営にフィードバックする
分析結果を、経営者や経営会議にフィードバックします。「退職面談のデータから、こういう組織課題が見えています。具体的な改善策として、こういう施策を提案します」——退職面談のデータを経営の意思決定に活かすことが、退職面談の最終的な目的です。
大阪のある専門商社では、半期に1回、退職面談のデータ分析を経営会議に報告しています。「退職理由の第1位は『キャリアの見通しが立たない』、第2位は『上司のマネジメントへの不満』だった。この結果を受けて、キャリアパスの整備と管理職研修の強化を決定した」と人事部長は話します。
ステップ④ 現場にもフィードバックする
退職面談のデータは、経営だけでなく現場の管理職にもフィードバックします。ただし、個人が特定されないよう、匿名化した上で傾向データとして共有します。
「あなたの部門から退職した社員の退職面談では、こういう傾向が見られました」——こうしたフィードバックが、管理職のマネジメント改善のきっかけになります。
退職面談の運用における注意点
注意点① 退職者の「匿名性」を守る
退職面談で聞いた内容が、退職者個人に不利益をもたらさないよう、情報の管理には細心の注意を払います。特に、退職者が転職先の企業名を伝えてくれた場合や、特定の上司に対する不満を語った場合は、その情報の取り扱いには十分注意が必要です。
注意点② 「引き留め」の場にしない
退職面談の場で引き留めを行うと、退職者は本音を語らなくなります。退職面談はあくまで「情報収集」の場として位置づけ、引き留めが必要な場合は別途行います。
注意点③ 面談を「義務」にしない
退職面談は、退職者の協力を得て行うものです。退職者が面談を希望しない場合は、無理に実施しない配慮が必要です。
注意点④ 面談結果を放置しない
退職面談で得た情報を活用しなければ、面談を行う意味がありません。面談の結果を分析し、組織改善に活かす仕組みを構築することが、退職面談を有意義にするための最も重要なポイントです。
まとめ:退職は「終わり」ではなく「学び」の機会
社員の退職は、企業にとって損失です。しかし、退職から「学ぶ」ことができれば、損失を最小限に抑え、組織を改善する契機にすることができます。
退職面談は、その学びの機会を最大化するためのツールです。形式的にやるだけでは何の価値もありません。目的を明確にし、質問を設計し、本音を引き出し、データを分析し、組織改善に活かす——この一連のサイクルを回すことで、退職面談は初めて機能します。
関西の中小企業では、経営者と社員の距離が近いからこそ、退職面談で得た情報を迅速に経営判断に反映できるという強みがあります。この強みを活かして、退職面談を組織改善の重要な情報源として活用していただきたいと思います。
退職する社員の声に、組織が変わるためのヒントが詰まっています。その声を拾い上げ、活かすことが、人事の大切な仕事の一つです。
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