関西の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消する方法
育成・研修

関西の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消する方法

#1on1#エンゲージメント#評価#研修#組織開発

関西の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消する方法

「プレイヤーの仕事で手一杯で、マネジメントなんかやってる暇ないんですわ」

大阪・本町のある中堅商社の営業課長が、疲れ切った表情でそう話してくれました。個人の営業目標を持ちながら、8名の部下のマネジメントも担当している。朝は自分の商談準備、日中は顧客訪問、夕方からは部下の相談対応と日報チェック、夜は部下の評価シートの記入——1日が24時間では足りない。「マネジメントに時間を使いたい」と思ってはいるが、目の前の数字を達成しなければ自分の評価に響く。結果として、マネジメントは後回しになり、部下は放置され、チームの成果も上がらない。

この「プレイングマネージャー問題」は、関西の中小企業で特に深刻です。

大企業であれば、管理職はマネジメントに専念できるケースが多い。しかし、中小企業では人員的な余裕がなく、管理職も「プレイヤー」として第一線で働きながら、「マネージャー」としてチームを率いるという「二足のわらじ」を履くことが当たり前になっています。

私はこれまで500社以上の企業で人事に関わってきましたが、プレイングマネージャー問題は「個人の能力不足」ではなく「組織の設計の問題」だと考えています。一人の人間に「プレイヤーとしての成果」と「マネージャーとしての成果」の両方を求めるのであれば、それが実現できる「仕組み」を組織が整える必要があります。

この記事では、関西の企業が管理職の「プレイングマネージャー問題」を解消するための方法について、一緒に考えてみたいと思います。


プレイングマネージャー問題が深刻化する3つの原因

原因① 「プレイヤーとしての成果」で評価している

管理職の評価が「個人の売上」「個人の成績」に偏っていると、マネジメントに時間を割く動機が生まれません。極端な話、部下を放置して自分の数字を追った方が「評価が上がる」構造になっている企業もあります。

大阪のある不動産会社(営業30名)では、営業課長の評価の70%が「個人の売上」、30%が「チームの売上」でした。この配分では、課長にとって「自分で売る」方が合理的な行動になる。部下の育成に時間を使うインセンティブがない。この評価制度を「個人30%、チーム50%、マネジメント行動20%」に変えたところ、課長の行動が明らかに変わり始めました。

原因② 「マネジメントの時間」が確保されていない

プレイヤーとしての業務量がそのままで、マネジメント業務が「追加」されている。1日8時間のうち7時間がプレイヤー業務で埋まっている状態で、「残りの1時間でマネジメントもお願い」——これは物理的に無理があります。

原因③ 「マネジメントの方法」を教えていない

優秀なプレイヤーが昇進して管理職になるケースが多いですが、「売るスキル」と「育てるスキル」は全く異なります。マネジメントの方法を教えないまま管理職に就かせ、「自然にできるようになるだろう」と期待するのは、組織の怠慢です。


プレイングマネージャー問題を解消する5つのアプローチ

アプローチ① 管理職の「評価制度」を変える

管理職の評価に「マネジメント」の要素を明確に組み込みます。

推奨する評価配分の例:

  • プレイヤーとしての成果:30%
  • チームの成果(チーム全体の売上・目標達成率):40%
  • マネジメント行動(1on1の実施、部下の育成、評価面談の質):30%

この配分にすることで、「マネジメントに時間を使うことが、自分の評価向上につながる」構造を作ります。

京都のある製造業(従業員80名)では、管理職の評価を改定し、「部下の成長度」を評価項目に加えました。具体的には、「部下のスキル習得状況」「部下のエンゲージメントスコアの変化」を数値化し、管理職の評価に反映しています。この改定以降、管理職が部下の育成に積極的に時間を割くようになりました。

アプローチ② 「プレイヤー業務」を段階的に減らす

管理職のプレイヤー業務を、段階的に部下や他のメンバーに移譲していきます。

  • 新任管理職(1年目):プレイヤー70%、マネジメント30%
  • 管理職(2〜3年目):プレイヤー50%、マネジメント50%
  • 熟練管理職(4年目〜):プレイヤー30%、マネジメント70%

いきなり「プレイヤー業務をゼロにしろ」は現実的ではありません。しかし、段階的にマネジメントの比重を高めていくロードマップを示すことで、管理職は「マネジメントへの移行」を計画的に進められます。

アプローチ③ 「マネジメントの型」を教える

マネジメントは「才能」ではなく「技術」です。基本的な型を学ぶことで、誰でも一定水準のマネジメントができるようになります。

最低限教えるべき「マネジメントの型」:

  • 1on1の進め方:月1回30分の対話の型(傾聴→質問→フィードバック→合意)
  • 目標設定の方法:SMART基準を使った目標設定と月次レビューの型
  • フィードバックの技術:「SBI(Situation-Behavior-Impact)」モデルを使った具体的なフィードバックの型
  • 権限委譲の方法:段階的に権限を委譲していく型

大阪のある物流会社(従業員100名)では、新任管理職に対して「マネジメント基礎講座」(全6回、各2時間)を提供しています。「1on1の実践」「目標管理の運用」「フィードバックの技術」「チームビルディング」「権限委譲」「メンタルヘルス対応」——6つのテーマを半年かけて学び、各回の間に「宿題」として実際のマネジメント場面で実践する。「学んで、やってみて、振り返る」サイクルが、マネジメントスキルの定着に効果を発揮しています。

アプローチ④ 「サポート体制」を整える

管理職が一人ですべてを抱え込まなくてもよい「サポート体制」を整備します。

  • アシスタントマネージャーの設置:管理職の下にサブリーダーを設け、マネジメント業務を分担する
  • 管理業務の効率化:日報チェック、勤怠管理、経費処理などの管理業務をシステム化し、管理職の事務負担を軽減する
  • 人事部門のサポート:評価面談の進め方、困難な部下への対応——こうした場面で人事がアドバイザーとして支援する
  • 管理職同士のピアサポート:管理職同士が悩みを共有し、助け合うコミュニティを作る

神戸のある食品メーカー(従業員70名)では、月1回の「マネージャーズランチ」を開催しています。全管理職が集まり、ランチを食べながら「今月マネジメントで困ったこと」を共有する場です。「うちの部下がこういう状態なんやけど、みんなどうしてる?」——こうした率直な相談ができる場があることで、管理職の「孤独」が軽減されています。

アプローチ⑤ 「マネジメントの成果」を可視化する

マネジメントの成果は、プレイヤーの成果に比べて「見えにくい」のが難点です。売上は数字で見えますが、「部下を育てた」「チームの雰囲気を良くした」はすぐに数字に表れない。

だからこそ、マネジメントの成果を意識的に「見える化」する仕組みが必要です。

  • チームの目標達成率の推移
  • チームメンバーのスキル成長度
  • チームの離職率の推移
  • 部下からのフィードバックスコアの推移

これらの指標を定期的にモニタリングし、「この管理職のマネジメントによって、チームがこう変わった」を数字で示すことで、マネジメントの価値が経営者にも本人にも伝わります。


関西の企業文化とマネジメント

「面倒見の良さ」を仕組みに変える

関西の企業には「面倒見の良い上司」が多い印象があります。この「面倒見の良さ」は素晴らしい資質ですが、個人の資質に頼るだけでは「面倒見の良い上司」が異動した途端にチームが崩壊します。個人の「面倒見の良さ」を組織の「マネジメントの仕組み」に昇華させることが重要です。

「実利主義」でマネジメント投資を語る

関西の経営者に「マネジメントに投資すべきです」と言うとき、「人のため」だけでは動きにくい。「マネジメントの改善により離職率が5%下がれば、年間○万円のコスト削減になる」「部下の育成により一人あたりの生産性が10%上がれば、追加の人件費なしで売上が○万円伸びる」——こうした数字で語ることが、関西の経営者を動かします。


「管理職になりたくない」問題との関係

プレイングマネージャー問題は、「管理職になりたくない」という若手社員の意識とも密接に関連しています。

多くの若手社員が管理職を避ける理由の一つが、「大変そうに見えるから」です。プレイヤー業務をこなしながらマネジメントも求められ、残業が増え、ストレスが溜まっている管理職の姿を見て、「自分はああなりたくない」と感じる。この悪循環を断ち切るためにも、プレイングマネージャー問題の解消は急務です。

管理職が「適切な負荷の中で、やりがいを持ってマネジメントに取り組んでいる」姿を見せることが、次世代のリーダーを育てる最も効果的な方法です。

大阪のある電子部品メーカー(従業員90名)では、管理職の評価改定と業務分担の見直しにより、管理職の平均残業時間が月40時間から月20時間に減少しました。同時に、管理職の仕事満足度が向上し、「管理職に挑戦したい」という若手社員が増えたそうです。管理職が健全に機能する姿は、組織全体のモチベーションを高めます。

プレイングマネージャー問題の解消は、「管理職個人の努力」ではなく「組織の設計変更」で取り組むべきテーマです。関西の企業が、管理職が「プレイヤーとしてもマネージャーとしても」力を発揮できる組織を作っていくこと。その実現に向けて、一緒に考え続けたいと思います。


まとめ:プレイングマネージャー問題解消チェックリスト

  • [ ] 管理職の評価に「マネジメント」の要素が含まれているか
  • [ ] プレイヤー業務の段階的な縮小ロードマップがあるか
  • [ ] マネジメントの基本スキル研修を実施しているか
  • [ ] 管理職の事務負担を軽減するシステム化が進んでいるか
  • [ ] サブリーダーやアシスタントの配置でマネジメント業務を分担しているか
  • [ ] 管理職同士のピアサポートの場があるか
  • [ ] マネジメントの成果を数値で可視化しているか
  • [ ] 管理職のマネジメントに使える時間を確保する仕組みがあるか
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