
関西の企業がリーダーシップ開発を「研修頼み」にしない方法
目次
関西の企業がリーダーシップ開発を「研修頼み」にしない方法
「管理職研修に200万円かけたのに、現場は何も変わってないんですわ」
大阪・中之島のある中堅メーカーの人事部長が、無念そうにそう話してくれました。外部の研修会社に依頼し、全管理職30名を対象に2日間のリーダーシップ研修を実施した。研修直後のアンケートでは満足度も高かった。しかし3ヶ月後、現場のマネジメントは何も変わっていなかった。研修で学んだことは「その場限り」で終わり、日常の行動に定着しなかった。
この「研修は良かったけど、現場が変わらない」問題は、関西の多くの企業が経験しています。リーダーシップ開発を「年に数回の研修」だけで済ませようとするのは、ジムに年に2回だけ通って体を鍛えようとするようなものです。一時的に意識は高まりますが、日常的な実践がなければ、行動は変わりません。
私はこれまで500社以上の企業で人事に関わってきましたが、リーダーシップ開発で最も重要なのは「研修の質」ではなく「日常の実践の仕組み」だと考えています。研修は入口に過ぎません。学んだことを日常業務の中で実践し、フィードバックを受け、改善し続けるサイクルがなければ、リーダーシップは育ちません。
この記事では、関西の企業がリーダーシップ開発を「研修頼み」にしないための方法について、一緒に考えてみたいと思います。
リーダーシップ研修が「効かない」3つの理由
まず、研修だけではリーダーシップが育たない構造的な理由を整理します。
理由① 「知識」と「行動」の間にギャップがある
研修で「1on1の重要性」を学んでも、忙しい日常に戻れば「やる時間がない」。「部下の話を傾聴しましょう」と教わっても、実際の場面では「結論から言ってくれ」と遮ってしまう。「知っている」と「できる」は全く別の能力であり、この間を埋めるのは「反復的な実践」です。
理由② 「職場の文化」が変わらない
研修で個人の意識が変わっても、職場に戻れば従来の文化に引き戻されます。「研修でこう学んだのに、うちの部署では通用しない」——研修内容と職場の現実の乖離が大きいと、学びは実践に結びつきません。
京都のある製造業(従業員100名)では、管理職研修で「権限委譲の重要性」を学んだ課長が、部署に戻って部下に権限を委譲しようとしたところ、部長から「勝手にやり方を変えるな」と止められました。組織全体の文化が変わらなければ、個人の行動変容は持続しません。
理由③ 「フォローアップ」がない
研修後に、学んだことの実践状況を確認し、フィードバックするプロセスがない。研修は「イベント」として完結し、日常に連結されていない。これでは研修の効果は急速に薄れます。
リーダーシップ開発の「7つの実践アプローチ」
研修に代わる——あるいは研修と組み合わせる——7つの実践的なリーダーシップ開発アプローチを紹介します。
アプローチ① 「1on1の実践と振り返り」
リーダーシップの最も基本的な実践の場は、部下との1on1です。月1〜2回、30分の1on1を定期化し、その内容を振り返る仕組みを作ります。
大阪のある物流会社(従業員120名)では、全管理職に月2回の1on1を義務化し、四半期に1回、管理職同士で「1on1の振り返り会」を実施しています。「こんな場面で困った」「こうしたらうまくいった」——管理職同士の学び合いが、1on1の質を継続的に向上させています。
アプローチ② 「リーダーシップ360度フィードバック」
上司、同僚、部下からの多面的なフィードバックは、自分のリーダーシップスタイルを客観的に知る貴重な機会です。年に1回の360度フィードバックを実施し、その結果をもとに「自分の改善テーマ」を設定する。
ただし、360度フィードバックは慎重に運用する必要があります。「評価」ではなく「開発」のためのツールであることを明確にし、結果が人事評価に直接使われないことを保証する。
アプローチ③ 「実践課題(アサインメント)」の付与
リーダーシップは、挑戦的な経験を通じて最も効果的に育ちます。
- 部門横断プロジェクトのリーダー
- 新規事業の立ち上げメンバー
- 問題のある部署の立て直し
- 後輩の育成担当(メンター)
こうした「ストレッチアサインメント(少し背伸びが必要な任務)」を意図的に付与し、その中でリーダーシップを実践してもらう。経験から学ぶ——これがリーダーシップ開発の王道です。
神戸のある食品メーカー(従業員80名)では、次世代リーダー候補に「全社業務改善プロジェクト」のリーダーを任せています。通常業務とは異なる「正解がない課題」に取り組むことで、問題解決力、巻き込み力、意思決定力——リーダーに必要な能力が実践の中で鍛えられています。
アプローチ④ 「メンタリング・コーチング」
経験豊富なリーダーが、次世代リーダーの「メンター」となり、キャリアやマネジメントの悩みに伴走する仕組みです。
メンタリングとコーチングは似ていますが、メンタリングは「経験者からの助言」が中心、コーチングは「本人の気づきを引き出す質問」が中心です。いずれも、研修では得られない「個別具体的な学び」を提供します。
大阪のあるIT企業(従業員60名)では、新任管理職全員に、社外のエグゼクティブコーチを6ヶ月間つけています。月1回のコーチングセッションで、「今の課題は何か」「どう解決するか」を一緒に考える。コーチングを受けた管理職からは「自分一人では気づけなかったマネジメントの盲点に気づけた」という声が多く、管理職としての立ち上がりが明らかに早くなったそうです。
アプローチ⑤ 「リーダーシップの読書会・勉強会」
月1回、管理職が集まってリーダーシップに関する書籍やケースを題材にディスカッションする場を設けます。外部研修のように大きなコストをかけずに、「考える機会」を継続的に提供できます。
京都のある電子部品メーカー(従業員150名)では、月1回の「マネジメント勉強会」を3年以上続けています。毎回、リーダーシップやマネジメントに関する書籍の1章を全員が読んできて、「自分の職場でどう活かせるか」をディスカッションする。「続けることが大事」という社長の方針のもと、特別な場合を除いて中止しないルールにしています。
アプローチ⑥ 「部下からのフィードバックの仕組み化」
部下が上司のマネジメントについてフィードバックできる仕組みを作ります。半期に一度、匿名のアンケートで「上司のマネジメントに対する評価」を収集し、管理職本人に結果を返す。
大阪のある商社(従業員70名)では、半期ごとに部下から上司への「マネジメントフィードバックアンケート」を実施しています。「業務の指示は明確か」「相談しやすい雰囲気があるか」「成長を支援してくれるか」——5つの質問に5段階で回答する簡易なものですが、管理職が「自分のマネジメントが部下にどう映っているか」を知る貴重な機会になっています。
アプローチ⑦ 「経営への参画機会」
次世代リーダーに、経営に近い視座を持つ機会を提供します。経営会議へのオブザーバー参加、中期経営計画策定プロジェクトへの参画、経営者との対話の場——こうした「経営の視点」に触れる経験が、リーダーとしての視野を広げます。
リーダーシップ開発を「仕組み」にする
上記のアプローチを「点」ではなく「線」としてつなげ、リーダーシップ開発の「仕組み」にすることが重要です。
例えば、次世代リーダー候補に対して、以下のような「リーダーシップ開発プログラム」を設計できます。
- 1年目:1on1の実践+マネジメント勉強会への参加+360度フィードバック
- 2年目:部門横断プロジェクトのリーダー+メンタリング(先輩管理職から)
- 3年目:経営会議へのオブザーバー参加+外部コーチングセッション
このように段階的にリーダーシップの「実践経験」を積み上げていくことで、研修に頼らない持続的なリーダーシップ開発が実現できます。
関西の企業文化とリーダーシップ
関西の企業文化には、リーダーシップ開発において活かせる要素があります。
「現場主義」の伝統
関西の製造業を中心に、「現場が一番大事」という価値観が根づいています。リーダーが現場に出て、現場の声を聞き、現場と一緒に問題を解決する——この「現場主義」のリーダーシップは、関西の企業の強みです。
「率直なフィードバック」の文化
関西の職場では、比較的率直にフィードバックを伝え合う文化があります。この「率直さ」は、リーダーシップ開発において貴重な資源です。部下からの率直なフィードバックがあるからこそ、リーダーは自分の改善点に気づけます。
「商い」から学ぶリーダーシップ
大阪の「商人」文化には、リーダーシップのヒントが詰まっています。「三方よし」の精神、「始末して開く」の合理性、「人の心をつかむ」コミュニケーション——こうした商人の知恵は、現代のリーダーシップにも通じるものがあります。
リーダーシップ開発は「経営投資」
リーダーシップの質は、組織のパフォーマンスに直結します。優れたリーダーのもとでは、チームの生産性が高く、離職率が低く、イノベーションが生まれやすい。逆に、リーダーシップの質が低いチームは、人材が流出し、成果が出ず、組織の活力が失われます。
リーダーシップ開発は「人にとって良い」だけでなく、「経営にとっても合理的」な投資です。研修という「イベント」だけでなく、日常の「実践」を通じたリーダーシップ開発の仕組みを作ること。それが、関西の企業の持続的な成長を支える鍵になると考えています。
まとめ:リーダーシップ開発チェックリスト
- [ ] リーダーシップ開発が「研修のみ」に依存していないか
- [ ] 1on1の定期実施と振り返りの仕組みがあるか
- [ ] 360度フィードバックを「開発」目的で実施しているか
- [ ] ストレッチアサインメントを意図的に設計しているか
- [ ] メンタリングやコーチングの仕組みがあるか
- [ ] 管理職同士の学び合いの場(勉強会など)があるか
- [ ] 部下から上司へのフィードバックの仕組みがあるか
- [ ] 次世代リーダー候補に経営視点に触れる機会を提供しているか
- [ ] リーダーシップ開発を段階的なプログラムとして設計しているか
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